在籍1年でJクラブ消滅「ショックでした」 異例の経験、小野伸二らと共闘…紆余曲折のサッカー人生【インタビュー】
東京都シニアリーグで現在もプレー「サッカーが大好きだから」
06年はワールドカップが開催されたドイツに渡り、当時3部リーグのクラブと半年契約で合意。アテンドしてくれたのが、かつて浦和レッズに所属した元西ドイツ代表のウーベ・バインだ。ところがテストに合格した翌日、強化責任者が解任されてこの話はご破算になる。 帰国後、草津の同僚で現在、水戸ホーリーホックコーチの樹森大介から図南SC群馬(現・tonan前橋)を紹介され、スクールのコーチを兼務しながら現役を続けた。図南は当時県リーグ1部だが、「こういうチームをJリーグに上げたら自分の財産になると思った」と説明。この年に指導者資格C級を取得して指南役への道を開き、2年目はコーチ兼任でピッチに立った。 チームは09年に関東リーグ2部に上がり、翌年1部昇格を果たすとともに氏家はベストイレブンに選ばれた。14年は監督代行としてプレーし、このシーズンをもって引退。理由は群馬からトップチームのヘッドコーチを依頼されたからだ。 「選手時代の思い出は?」との質問に、「フリューゲルでのデビュー戦や初ゴール、天皇杯優勝、それに世界ユースも忘れられない出来事だけど、一番は年を追うごとに成長していく自分を実感できたことです」と答える。 また、「(プロとしての)現役に未練はなかった?」と問いには、「クラブから求められたものが自分の持ち味とかけ離れたので、全然ありませんね。でもアマチュアとしては未練タラタラなんで、今でもオーバー40で現役ですよ。サッカーが大好きだから」と顔をほころばせた。 東京都シニアリーグの強豪、レアル東京40で現役続行中である。(文中敬称略。チーム名は当時の名称) [プロフィール] 氏家英行(うじいえ・ひでゆき)/1979年2月23日生まれ、東京都出身。横浜Fユース→横浜F→大宮→草津→図南SC群馬。J1通算9試合1得点、J2通算189試合0得点。1999年にワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)準優勝を経験。2014年に引退後、群馬のヘッドコーチ、GM補佐などを歴任。2018年度のS級コーチライセンスを取得。21年からトレーナーとしても活動し、パリ五輪レスリング女子62キロ級で金メダルを獲得した元木咲良にも指導。東京都シニアリーグの強豪レアル東京40でもプレーしている。 [著者プロフィール] 河野正(かわの・ただし)/1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。
河野 正 / Tadashi Kawano