日産/ホンダ/三菱が共同開発に乗り出した「SDVプラットフォーム」とは何か?
SDV推進は国策でもある。3社連合の結成は待ったなし
去る2024年8月1日に日産とホンダが発表した「次世代のSDVプラットフォームの基礎的要素技術の共同研究契約締結」。同日には三菱自動車もこれに加わることが発表されたが、注目すべきポイントはSDVの開発ではなく、SDV“プラットフォーム”の共同研究/開発であるところだ。つまり、従来のように車両(SDV)を共同開発するわけではない。ならば何を共同で研究開発するのだろうか、そもそもSDVプラットフォームって何なのか。 【写真】SDVプラットフォームをわかりやすいイラストで見る まず、SDV(Software Defined Vehicle)とは何であるか振り返っておこう。直訳すれば、“ソフトウェアによって定義されたクルマ=EV”だが、これではわかりにくい。そこで本稿ではもっと簡単に「ソフトウェアを無線通信(OTA=Over The Air)によって更新していくことで、購入後も機能と価値を継続的に維持または高めることができるEV」と定義することにする。ちなみに2024年5月24日には、経産省と国交省が策定した「モビリティDX戦略」が発表されている。2030年にはSDVのグローバル市場の全需が約3500万台から4000万台まで成長すると見込まれているが、そこで「日系シェア3割」の実現を目指すとしている。 EVがSDV化することでユーザーが享受できるメリットをごく簡単まとめてみると、おおまかに3点ある。 1)OTAによってさまざまなアプリが追加できる=好みのアプリを選択して自分だけの1台に仕上げることができる。 2)OTAによってクルマの基本性能を最新のバージョンに維持できる。 3)上記に関連してクルマの価値を維持することができる。 ほかにもいくつかあると思うが、ユーザー目線でいえば、とりあえず上記の3点が大きなメリットと言えるだろう。その結果、いままでのEVでは味わえなかった新たな「移動体験」が提供される。極論すれば、今までのEVはその動力源をエンジンからモーターに置き換えただけだが、SDV化が進むと“クルマ”の概念が覆る新たな価値が生まれるということでもある。 デメリットとしては、そもそも割高感があるEVにさらに高性能なデバイスを搭載することで、車両価格がさらに上がってしまう可能性があるという点だろう。それゆえSDVは、しばらくのあいだは高価格帯のEVに集中するかもしれない。 一方、自動車メーカー側の目線に立てば、クルマを売って終わりではなく、ソフトウェアの更新やアプリの販売(や課金)などで新たな収益源=ビジネスモデルが生まれる。さらに、開発/生産工程が簡略化されスピーディになる。スマホのようにある程度規格が統一されれば、アプリを開発するサードパーティの参入も容易になる。 とは言え、ここまでは理想論である。SDVの開発には、莫大な初期投資(資金と人材そして時間)が必要なのだ。 そこでクローズアップされるのが、日産/ホンダ/三菱が要素技術を共同で検討するという「SDVプラットフォーム」。すなわちSDVを実現するための仕組みであり、各種のアプリを制御する車載OS(ビークルOS)/ソフトウェアやアプリケーションの仕様や規格を3社で共通化=汎用化するための検討を始めると宣言したわけだ。