聖徳太子伝説の寺で胎内仏15年ぶり公開 災いからの復興に祈りこめ
聖徳太子(574~622)が開いたとされ、西国三十三所観音巡礼の札所、観音正寺(かんのんしょうじ)(滋賀県近江八幡市安土町)で1日、本尊の胎内仏の公開が15年ぶりに始まった。2022年からの太子1400年御遠忌(ごおんき)の一環で、3期にわたって公開する。前期は12月13日まで。 【写真】本尊から胎内仏を出す前、法要が営まれた=2024年11月1日午前10時11分、滋賀県近江八幡市、小西良昭撮影 寺には聖徳太子の伝説が残る。約1400年前、仏法興隆のために近江を訪れた太子が琵琶湖で人魚と出会う。人魚は前世が漁師で「無益な殺生を重ね、この姿になった。成仏させてください」と懇願した。太子は千手観音像を刻み、堂塔を建てた――。 標高433メートルの繖山(きぬがさやま)の頂にある寺では、この日、岡村遍導(へんどう)住職(57)らが本尊の千手観音座像(光背を含め高さ約6メートル)の前で法要を営み、胎内から千手観音立像(高さ約9センチ)を取り出して本堂奥に安置した。 ■31年前、寺に降りかかった災いとは 1993年5月22日、災いが寺に降りかかった。原因不明の火災で本堂と当時の本尊が焼失した。「本尊を失ったのは、私たちには罪。復興は罪滅ぼし」と岡村住職。2004年に本堂を再建し、インドから特別に輸入した香木の白檀(びゃくだん)で本尊を作った。 能登半島で繰り返す災害、ウクライナやガザで続く戦火。「秘仏の公開が今、必要ではないか」と岡村住職は明かす。 「苦しい目に遭っても観音様はほほ笑み、生きる勇気を与えてくれる。能登の方々には、復興には何十年もかかるが、諦めないでと伝えたい。復興を祈りたい」と話す。 胎内仏の公開は中期が来年4月1日~7月10日、後期は来年10月1日~12月13日。入山料(500円、小中学生300円)に加え、特別拝観料500円が必要。問い合わせは観音正寺(0748・46・2549)。(小西良昭)
朝日新聞社