「残業は減らない」「仕事が増加」不安の声も 文科省審議会の“教員不足解消案”に現役教員らが見解
「増額してあげたんだから」仕事増加の不安も
現役小学校教員の齋賀裕輝氏は、教科担任制を広げる案については評価。教職調整額の増額についても「ありがたい」が、一方で「『増額してあげたんだから、もっと仕事をしてくださいね』となる可能性があって、不安もあります」と明かす。 「教員は残業をやりたくてやっているわけではなく、私も定時で帰って子どものために明日も元気に学校に行けるようにしたいです。 しかし、ネットなどで“なんでも屋さん”だという風に言われている通りで、事務仕事やカウンセラー的な仕事、子どもたちに何かあった時には警察のような仕事もします。子どもたちに授業をして、勉強を教えることが本来の仕事だと思っていますが、こうしたさまざまな仕事があって、授業をするための準備ができないこともあります。 これからも現場で勤めたいと思っていますが、このままだと正直不安です。文科省には給料を増やすということだけではなく、教師の仕事を減らすということに重点を置いて動いてほしいと思っています」(齋賀氏)
小室淑恵氏「教員不足が解決するとも到底思えません」
民間企業などの働き方改革を多く手掛け、公立学校でも250校のコンサルティングを行った「株式会社ワークライフバランス」の小室淑恵氏も会見に参加。 教職調整額を設定し、教員らに残業代を支払わない根拠にもなっている「給特法(教員給与特別措置法)」がある限り、教員の労働に対する対価が正当に支払われることはないとして給特法を維持させる文科省の姿勢を批判した。 そもそも教職調整額は、給特法創設当時(1971年)8時間程度だった教員の残業実態に合わせて「4%」とした経緯がある。 これを踏まえ小室氏は、「教職調整額を10%に増額するということは、残業時間を20時間にするということです」と説明。 しかし、2022年の公立校教員の月間残業時間は小学校で82時間、中学校で101時間と1971年の10倍以上に膨れ上がっている。また、国は2016年から教員の残業時間の削減に乗り出しているが、2022年までの6年で20時間未満しか削減できていない。 「教員の残業時間を20時間にするために、国は一体何年かけるつもりなのでしょうか。(教職調整額の)予算ありきなのか、現実的とはとても言えず、今回の答申を受けて教員不足が解決するとも到底思えません」と小室氏は指摘し、長時間労働の抜本的な改革に向け以下のように提言した。 「給特法のもとでは、残業は教員個人の責任で、管理職が指示していないことになっています。残業時間を減らしたとしても、管理職の評価の対象にはなっていないのです。今回の答申の中にも、残業を減らした管理職の評価が上がるとか、逆に残業時間の規定をオーバーさせている管理職の降格といったことは全く書かれていませんでした。 本来であれば給特法を廃止し、教員に正当に残業代を支払う。残業時間についてコスト換算し、その削減が管理職の評価につながるということが、長時間労働の解消に重要なことではないでしょうか」
弁護士JP編集部