中国「618セール」大敗北で「経済終了」が明確に…iPhoneが4万円引き、「酒バブル」も崩壊へ
高額消費の「代表商品」が…
また、中国ブランドの人気が高まった。中国の化粧品屋家電メーカーは、ライブコマースを行い、割引クーポンも配布し、消費を喚起しようとした。過去と比べ中国企業の値引きは大きかったとの見方もある。 ところが、期間の延長と値引きにもかかわらず、今年の販売実績は減少した。中国の企業が予想した以上に、不動産バブル崩壊などで家計の貯蓄志向は高まり、節約を重視する人は増えていると考えられる。 中国国内の消費が勢いを失っていることは、株式市場の変化からも確認できる。6月21日、中国本土の株式市場で、貴州茅台酒(ケイチョウマオタイ酒)の時価総額はトップから転落した。マオタイ酒はコウリャンを原料にした蒸留酒だ。 最高級ブランドの貴州茅台酒は、高額消費の代表的商品だった。足許、家計、企業のバランスシート調整で、貴州茅台酒の需要減少懸念は高まっているようだ。ここからも個人消費の停滞が示唆される。 一方、5月、生産者物価指数(PPI)は前年同月比1.4%下落だった。前月の同2.5%下落からマイナス幅は縮小した。国家統計局が発表する他の指標にも、小幅ではあるが景気の持ち直しを示唆するものはある。EVや太陽光パネル、鉄鋼などの分野で国有・国営、政府が支援している主要な民間企業の生産増が背景と考えられる。
供給サイド重視の経済政策
中国政府は、国有企業などの生産能力を引き上げ、輸出競争力を伸ばし、景気回復につなげようとしている。景況感が上向けば、住宅価格や不動産販売が持ち直す可能性はある。 バランスシート調整圧力も緩和し、個人消費は持ち直すとの目論見が政府内にあるだろう。しかし、国有企業の生産増加にもかからず、住宅市場の下落に歯止めはかかっていない。 供給サイド重視の経済政策で、中国経済が本格的に回復することは難しいだろう。過剰生産能力がある中で供給力を引き上げれば、国有企業の生産性は低下し、不良債権増加の恐れは増す。 当面、中国の景気停滞懸念は高まりそうだ。618セールの結果に加え足許の人民元の下落は、その前振れに見える。 ーーーー 連載〈習近平、欧州訪問も「総スカン」でむしろピンチに…「過剰生産」で経済を破壊する中国に世界から非難集中〉も続けてお読みください。
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)