「思い伝えられた」 仙台育英・島貫丞主将 センバツ宣誓に達成感
第93回センバツ大会の開会式で選手宣誓を務めた仙台育英(宮城)の島貫丞(しまぬきじょう)主将(3年)は新型コロナウイルス禍の1年での「学び」を語るとともに、東北の代表校として10年の節目を迎えた東日本大震災にも触れ、「私たちが新しい日本の力になれるように、歩み続けます」と力強く宣誓した。自分たちの世代が、この10年の歩みを引き継ぎ、コロナ禍の中でも前に進む強い意志を示した。 【選手宣誓する仙台育英・島貫主将】 選手宣誓には強い思い入れがあった。福島県出身で東日本大震災の当時小学1年生だった。福島市の自宅や家族は無事だったが、東京電力福島第1原発事故の影響による不安な日々が続き、半年ほど山形県に避難もした。 「あの選手宣誓には非常に感動した」。東日本大震災の発生直後に行われた2011年のセンバツの選手宣誓では「阪神大震災の年に生まれた」という創志学園(岡山)の野山慎介主将が東日本大震災の被災者へ「がんばろう 日本」とエールを送り、翌12年には被災地の石巻工(宮城)の阿部翔人主将が「見せましょう、日本の底力、絆を」と語り、感動を呼んだ。小学生だった島貫主将も心動かされた一人。選手宣誓に選ばれて当時の自分を思い出し、「自分も小さい子に思いを伝えたい」と宣誓文を考えた。 東日本大震災から10年の節目というだけでなく、日本が世界がこの1年、新型コロナの不条理と向き合ってきた――。「たくさんの思いが重なる大会」と考え、宣誓では石巻工・阿部主将が当時使った「答えのない悲しみを受け入れることは、苦しくてつらいこと」との言葉を象徴的に引用することでそれらの思いを引き継いだ。 「あの日見た光景から想像できないほどの希望の未来に復興が進んでいます」と仲間に支えられながら困難を乗り越えてきた10年を語り、「これからの10年」について「私たちが新しい日本の力に」と自分たちが受け継いで前に進む意志を示した。 もう一つ引き継ぎたかったのが、前回大会が中止となり無念の涙を流した先輩たちの思いだ。チームのミーティングで文案を考えていた時、「2年分の思いを込めて、甲子園を戦えればいいんじゃないか」という意見が出て取り入れることにした。 宣誓では「高校球児の憧れの舞台である甲子園が戻ってきました」と切り出し、最後は声を最も響かせるようにして「2年分の甲子園。一投一打に多くのおもいを込めて、プレーすることを誓います」と締めくくった。 「たくさんの思いを自分の言葉でしっかり話して伝えられた、感じてもらえた」と宣誓後のインタビューでほっとした表情を見せた島貫主将。東北地区の代表校はこれまで春夏通じて甲子園で優勝したことがない。チームのスローガンは「日本一からの招待」。震災、コロナ禍とさまざまな思いが重なる年に、初めて「白河の関」を越えて優勝旗を東北に持ち帰るつもりだ。【面川美栄】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。