あなたの知らない札幌《札幌ドーム》前編 野球とサッカーのグラウンドに
【北海道・札幌】人口200万人の声も聞こえる北の大都市・札幌。その札幌には、多くの観光地や名物施設があります。とはいえ、札幌市民ですらそれらのすべてを知っているわけではありません。そこで不定期連載として「あなたの知らない札幌」と題した企画をスタートします。第1回前編は、今年開業15周年を迎えた札幌ドーム(札幌市豊平区)の秘密を札幌ドームのスタッフに聞きました。(構成/橋場了吾) 【写真】札幌ドームなのに除雪? 可動式の“サッカーグラウンド”でサポーターが汗
10時間かけて「ステージ転換」
札幌市中心部から国道36号線を東に向かうと、大きな卵にガラス張りの筒が刺さったような独特なフォルムが見えてきます。それが、2001(平成13)年に開業した札幌ドーム。野球場とサッカー場の両方の機能を兼ね備えた、日本で唯一「ホヴァリングサッカーステージ」を持つ施設です。 現在は、プロ野球では北海道日本ハムファイターズが、サッカーではコンサドーレ札幌が本拠地として使用していますが、そもそもは2002(平成12)年に日本・韓国で共催されたFIFAワールドカップ(札幌ドームではグループリーグ2試合が行われ、当時のイングランド代表デイヴィッド・ベッカム選手がゴールを決めている)に向けて建てられたスタジアムです。
札幌ドームの建設の段階で求められたのが「FIFAがワールドカップの開催地に求める条項(4万人以上の座席数の確保、全座席の3分の2以上が屋根に覆われていること、コーナーキックが全座席からみえること、など)をクリアすること」でした。そのため、ドーム型球場では珍しいシングルスロープスタンド(すり鉢状の座席設定)になり、ホヴァリングサッカーステージが開発されたのです。 ホヴァリングサッカーステージとは、野球のために設置されていた人工芝を剥がし、ドーム外に置いてあるサッカー用の天然芝のステージを中に移動させるという画期的なシステムです。 このステージの転換には、約10時間かかります。野球用の人工芝を剥がす以外にも、マウンドやベースが床下に格納されたり、野球用の座席が大移動したり、ホヴァリングサッカーステージをドーム内に移動した後に90度回転させたり、さまざまな作業があるのでこれくらいかかってしまうのです。 このステージは縦120メートル、横85メートル、重さ8300トンという大きさですので、移動の負担を軽くするために空気圧によって浮上させてから移動します。それが「ホヴァリング」(空中で停止する、の意味)と名付けられた所以です。