「検証・安倍政権」<外交編>活発だった首脳外交、中韓関係が課題
アジアとの関係
一方、アジア諸国との関係では、安倍首相はすでにすべての東南アジア諸国を訪問しており、またオーストラリアなどとも関係増進に努めていますが、日本のもっとも重要な隣国である中国および韓国との関係ではまだ問題があります。 第2次安倍政権の発足以来懸案であった首脳同士の会談については、中国の習近平主席とは先般のAPEC首脳会議の際に会談が実現しました。これは一つの大きな前進でした。安倍・習会談に先立って行なわれた事務レベル協議では、東シナ海において不測の事態の発生を回避するため危機管理メカニズムを構築することで意見が一致しました。一方、中国は尖閣諸島に対する主張を維持していますし、昨年には防空識別圏の恣意的な設定や中国軍機が自衛隊機に異常接近する事態が起きています。両国の首脳は共通の関心事について機動的に、緊密に協議し、問題の迅速な解決を図っていかなければなりません。 韓国との間では、米国大統領が仲介する形で、あるいはAPECなど多国間外交の場で安倍首相と朴槿恵大統領が短時間言葉を交わしただけで両首脳間の直接の会談は実現していません。韓国側は、慰安婦などいわゆる歴史問題に安倍首相が積極的に取り組むことを求め、その面での進展がないと首脳会談には応じないという姿勢です。歴史問題については韓国と中国の立場は共通しており、また、歴史問題の扱いを誤ると米国との関係を不必要に悪化させる危険もあります。それだけにこの問題の扱いは非常に困難ですが、日本としては中国および韓国との関係で加害者であったという歴史を軽視することなく、適切に対処していく必要があります。日韓関係は基本的にはまだ困難な状況にありますが、雰囲気が若干変化し、関係改善の兆しとも取れる面も出てきつつあるのでさらなる前進を図る必要があります。 日中関係も日韓関係もきわめて重要であることは言うまでもなく、関係を増進するためには双方の努力が必要です。国家間で利害関係が一致しないことは何ら不思議でなく、時に極端な考えや行動に走り、いたずらにナショナリスティックになる危険がありますが、双方ともそのような危険を回避し、必要であれば我慢強く関係を増進させていかなければなりません。 (美根慶樹/キヤノングローバル戦略研究所)