NISAは初心者が入りやすい投資方法と聞きますが、70歳から始めるのは遅すぎですか?
2024年から、NISA制度が大幅に拡充されました。みなさまのなかにも、銀行や証券会社に申し込んだ方がいるのではないでしょうか。 また、NISAは非課税枠が大幅に拡大されただけでなく、非課税期間も恒久化されたので、大きな投資も可能になりました。 それだけではなく、NISAは18歳以上なら月100円からいつでも加入できて、何歳からでも下ろせるという柔軟性があります。初心者の方が試しにやってみるには絶好の対象です。
70歳のAさんからの相談
あるとき、70歳のAさんから以下のような相談を受けました。 「私は20年来、株式投資をやっていますが、どうももうかりません。通算すると損をしているのではないかと思います。株価が上がるとつられて買ってしまい、下がるとまた買ってしまいます。 ところが、さらに下がると怖くなって買うのをやめてしまいます。しかしそうしているうちに、株価が上がってしまいます。そして、今度株価が下がると慌てて売ってしまうのです。自分は、株式投資に向かないのではないかと悩んでいます」 Aさんの言うとおり、それが株式投資の難しいところです。株価の動きに左右されて一喜一憂し、思ったとおりの結果にならず、後悔が残ります。 このとき、私は「つみたてNISA(現「新NISA」におけるつみたて投資枠)をやってみたらいかがでしょうか」と勧めました。つみたてNISAは、政府の基準をクリアしている低コストの投資信託に毎月少しずつ積立を行うもので、一生涯継続することができます。70歳からでも始められ、好きなときに下ろせ、利益にも税金がかかりません。 何よりもよいのは、毎月機械的に一定額を購入することで、自分自身の判断や欲が入り込まないことです。長期にわたって満遍なく投資をするので、同じ投資信託をある時期には高値で買っていても、しばらくすると安値で買えることもあります。
解説:まず、つみたてNISAから始めよう! 18歳から加入できて、いつでも引き出せる
つみたてNISAは、2024年から非課税投資枠が年間120万円に増え、月当たり10万円まで投資できます。また、月100円から始められ、低コストの投資信託に毎月少しずつ積立を行い、さらには一生涯継続することができます。 なお、同じく運用益に税金がかからない「iDeCo(個人型確定拠出年金)」もありますが、iDeCoに加入できるのは65歳未満までなので、残念ながらAさんのような70歳の方は加入できません。 それに対し、つみたてNISAは18歳以上ならいつでも加入できて、何歳からでも資金を引き出せるという柔軟性があります。加えて、なぜつみたてNISAが70歳からの投資に適しているのか、以下で説明します。 ◆1. 10年程度以上の長期積立をすることで、時間とともに変動する株価のリスクを和らげることができる 例えば、2008年にアメリカから端を発したリーマン・ショックは、当時「史上最悪」といわれました。ところが、5年半で株価は暴落前のレベルに戻りました。 10年から20年間の長期にわたり、毎月一定金額の株を買えば、高いときも安いときも休まずに株を買うことになります。積立投資を行うと、時間によって上記のリーマン・ショックのような株価の変動が吸収され、投資に失敗するリスクは減ることになります。 これは、安定性を目指す70歳からの投資には大切なことです。また、毎月一定額を買うことにより、毎月株を同じ数だけ買う場合に比べ、購入単価を下げることができます。 ◆2. 積立金額は月に100円から10万円の間で自由に設定ができ、金額を変えることも容易 つみたてNISAでは積立金額が自由に選べるので、何らかの理由で資金に余裕がなくなった場合は、積立金額を下げることができます。 したがって、収入が不安定な70歳からの投資に適したものといえます。また、少ない金額からでも始められるので、投資の初心者にも向いています。 ◆3. 相場が下がっているときでも、積立を行っていると、不安を和らげる効果がある 先に説明しましたが、株式投資は感情に左右されることが多く、株価が暴落したときにも、平然として冷静に判断できる人は少ないものです。「感情に打ち勝つことができるかどうかで投資の成功が決まる」といっても過言ではありません。 長期に積立を行うメリットは、相場の下落時にも、それほど大きなストレスを感じずに済むことです。 毎月少しずつ投資をするので、「間違っても致命傷にはならない。最悪、積立を中断して様子を見ることもできる」という余裕を持つことができ、比較的冷静に積立を続けることができます。中断をしなくとも、積立金額を月100円にして様子を見ることも可能です。 「下手の考え休むに似たり」というとおり、感情に左右されない投資を行うには、積立投資が一番です。 執筆者:浦上登 サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部