中村倫也、料理のこだわりは“とにかく簡単なもの” 次なる目標は「アメリカに乗り込んで、ジャパニーズ雑炊を広めたい」<THE やんごとなき雑炊>
俳優・中村倫也の“料理”と“人生観”が詰まった初の料理本「THE やんごとなき雑炊」が3月14日に発売される。同書は「俳優の中村倫也が「雑炊」を作りながら「雑談」をし、その調理過程からイマジネーションしてショートエッセイを執筆する」というコンセプトのもと、2022年4月号から約1年半にわたり雑誌『ダ・ヴィンチ』にて連載してきた料理連載を1冊にまとめたもの。19回分の連載誌面に加え、書籍撮り下ろしの特別企画として、中村自身が考案した第20回「雑炊レシピ」が収録されている。そんな書籍の発売を控えた中村に、本書に込めた思いや、雑炊への思いをインタビュー。発売日にちなみホワイトデーのエピソードも話してもらった。 【撮りおろし7枚】カーテンからひょっこり出てくる姿がかわいい中村倫也 ■アメリカでジャパニーズ雑炊を広めたい ――2021年に発売した「THE やんごとなき雑談」に続き、今回は「THE やんごとなき雑炊」というタイトルだそうですね。タイトルは中村さんのインスピレーションだそうですが、なぜ雑炊なんでしょう? 「雑談」が書籍になって、本屋に並ぶって思ったときに、横に「雑」で始まる別の本があったらおもしろいなって思ったんです。それで「雑」から始まる二字熟語を考えて、「雑炊」ならいけるんじゃないかなって。 ――「雑炊」に思い入れがあったのでしょうか? 1ミリもないです。考えたことが全くない、人生で。 ――そこから結果として雑誌連載では約1年半雑炊を作り続けたわけですが、雑炊への思い入れは生まれましたか? 「雑炊」って調べたら、次に僕の名前が出るぐらいになってきたのかなって思います。「雑炊」のページもそんなないだろうしね。だから、そういう意味では、僕の代名詞ですね。“カメレオン”俳優に代わる、“雑炊”俳優になれたのかなと。今は本場アメリカに乗り込んで、ジャパニーズ雑炊を広めたいなと思っていますよ。 ――本当ですか? 本当ですよ(笑)。 ■料理のこだわりは、とにかく簡単なもの ――自宅でもリピートした雑炊はありますか。 いくつかあります。1回目に作った「中国の、田舎町の、怖い先輩雑炊」とか。書籍の中でも話していますけど、菜の花が売っていなかったので、クレソンで代用して作りました。あとは、第9回の「おいしい赤球(秋の思い出)」と、生ハムを使った雑炊、第6回の「あの波に消えた、ビーチボールは。」あたりかな。 ――リピート基準はなんですか? 作りやすかったのか、食べたかったのかで言うと。 両方ですかね。あと、簡単で、食材も手に入りやすくて。そういう感じだと思います。 ――特に思い出のある雑炊があれば、お伺いしたいです。 「おいしい赤球(秋の思い出)」はすごくおいしかったです。粉唐辛子にコチュジャンにおろしニンニク…抜群に好きなタイプの味でした。無性に辛いものが食べたくなるときがあるんですけど、こういうのがいいですよね。 ――読者の方に勧めるなら、どれでしょう? たけのことセリを使った第2回「紫式部の蹴鞠飯」ですかね。これは上品な和食屋で出るような味で。本格的な雑炊を味わいたいならこれかなと。ロールキャベツ雑炊、第10回「朝のパレヱド」なんかはご家族でやってみてほしいです。一緒に作る楽しさがあるかなと思うので。 ――1人で料理を作るのと、誰かと料理で作るのって違うものでしょうか? 違うんじゃないですか? 誰かと一緒に料理を作ったことは、僕はないですけど。工程も分けられるし。あと、うまくいった、うまくいかなかったがわかりやすい方が、誰かと作るときは楽しそうな気がしますね。 ――料理をする人同士で一緒に作ると意見が分かれたりするんじゃないかと想像してしまうのですが、中村さんご自身は料理において譲れないポイントはありますか? 自分で作るなら、簡単な料理が好きなんですよね。「ここから3時間待ちます」とか言われると、「いや、3時間て!」ってなっちゃいます。 ――なるほど。ちなみに中村さんがよく作る料理はなんでしょうか? よく作る料理…なんだろう…。朝、米と納豆と味噌汁とウインナーと、目玉焼きか卵焼きかみたいな感じですかね。一人暮らし時代から、ずっとそんな感じなんですよ。ウインナーは本当にいいんですよね。茹でてもいいし、焼いてもいいし、時間がないときはタッパーに水を張ってウインナーを入れてレンジでチンすれば、小腹が空いたときに食べられるし。簡単。 ■雑炊を作る連載は、サークル活動に近かった ――本文のなかで「この企画の読者とスタッフの前では無理したくない」という発言がありましたが、それはなぜでしょう? 自分のためにやっている企画で、それを育てるためですかね。外部の人たちが考えた企画に参加したり、のっかったりするのとはちょっと違うというか。例えば「これ言ってください」とかって言われることがあったとして、内側でやっているものには、それをやる必要はないんですよね。それをやっちゃうと内側じゃなくなっちゃいますし。 ――では、あまりこの連載に関しては、仕事で雑炊を作っているという感覚ではなかったのでしょうか? えーっと、(仕事って思う気持ちは)15%ぐらいかな(笑)。 ――思った以上に、低くて驚きました。 感覚的には、サークル活動みたいな感じが強かったんです。だけど、書籍化するにあたって、やっぱりそれは創作物としての柱が必要になってくるので、後半に入ってからは、そういうことを考えながら、やっていたかな。帳尻合わせってやつですね。 ■この1冊があれば思い出に ――SNSでの反応を見たところ、ホワイトデーが発売日ということもあって、中村さんからのホワイトデープレゼントだと喜んでらっしゃる方も見受けられました。それにちなんで、ホワイトデーの思い出があれば教えてください。 僕が記憶に残っている人生で最初のホワイトデーは、チョコレートをもらってもないのに、自分の好きな子にあげたってことですかね。当然キョトンとされました。あげたかったんでしょうね、幼稚園のときですけど。 ――バレンタインでもらえることを期待していたんでしょうか? あんまり…。小学生のときは、あったかもしれないですけど、そんなに人生であんまり考えたことはないです。あとは、辛く切ないお話しかないですね。書くのもはばかられる。 ――ファンの方には、どんなふうに楽しんでほしいでしょう? 撮り下ろしもありますし、自分考案みたいなものもあったりしますし、連載にはなかったエッセイも盛り込まれているので、そういうところを楽しんでいただけたらなと。それから、この1冊が家にあれば、お友達が家に来たときとか、好きな人の前で「ちょっと雑炊作るね」ってハードルを下げて、びっくりさせるのもいいと思います。それで1個、トークが弾んだり、思い出になったりするでしょうからね。こういう知恵をひねって考えた雑炊のレシピって、そういう場面で活躍してくれるんじゃないかなと思います。 ――いいですね! あとは、あとがきにも、少し書いているんですけど、そういうおいしいものを食べたときや作ったときに、付随する物語があると、思い出にもなると思うんです。それで、思い出の数が多いほど、自分の人生を定点観測できると思うので、その1個になる可能性がある本だなと思います。 ◆取材・文/於ありさ 撮影/友野雄 スタイリスト/戸倉祥仁(holy.) ヘアメイク/松田陵(Y's C) 衣装クレジット/ニット、SHOOPシャツ、パンツ、共にATTACHMENT 全てSakas PR