センバツ高校野球 専門家指導で体力強化 今年度から週1度、作新学院 /栃木
◇数値目標も設定、効率的にレベル向上 第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に出場する作新学院は今年度から、プロスポーツ選手の育成にも携わるフィジカルトレーナーから定期的に指導を受けている。専門家の知見に基づく効率的なトレーニングで打撃や投球のレベルをさらに上げようと、ひたむきに体力強化に取り組む。【鴨田玲奈】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 「きつい……」「よっしゃー、できた!」。1月末、カンセキスタジアムとちぎ(宇都宮市)のトレーニングルームで3人のトレーナーが見守る中、作新学院の選手たちが筋力を養うデッドリフトや、瞬発力を鍛えるボックスジャンプなどに汗を流していた。 指導するのは公益財団法人・県スポーツ協会「とちぎスポーツ医科学センター」のトレーナー。同センターは2022年にあった「いちご一会とちぎ国体」を前に、県内アスリートの育成、強化を目的に県が開所した。同スタジアムを拠点に、最新鋭の機器を使用し、医・科学的知見に基づくトレーニングを実践している。 県から委託されたスポーツ医科学サポート事業の一つとして、県高野連から推薦された作新学院は23年4月から週に1度のペースで指導を受けている。トレーナーの中で中心的な役割を果たしているのは指導担当専門員の松田堅太郎さん(39)。スポーツ選手の障害予防やパフォーマンス向上に関する専門資格を持ち、19年からはアイスホッケーの栃木日光アイスバックスの専属トレーナーを務めている。 同センターの指導を受ける前、選手たちは学校にあるトレーニングルームで各自で鍛えていた。「指導を始めた当初はトレーニングの正しいやり方を教わらずに、ただ繰り返しているだけの選手が多かった」と松田さん。効果を最大限発揮するには、鍛えている体の部位や、その部位を強化することが野球にどう生かされるかを意識することが重要といい、選手たちには各トレーニングの動作が持つ意味を逐一言語化して伝えていると言う。 中堅手の小川亜怜(1年)は「中学生のころはバーベルの重りを増やせばそれで良いと思っていた。正しい姿勢でやることが重要と教えてもらって勉強になった」と話し、トレーニングで「下半身が強くなり、スイングスピードが上がった」と手応えを口にする。 こうしたトレーニングに加え、体重や体脂肪率、スイングスピードやジャンプ力などの測定も半年に1回ほど実施。その結果を基に、選手たちは自分の体の状態や変化を把握し、具体的な数値目標の設定に生かしている。主将の小森一誠(2年)は、12月の計測で前回より筋肉量が増加し、30メートル走の記録も4・5秒から4・0秒に上がった。「数値化されることでやる気が出るし、以前よりも自分の体と向き合えるようになった」と話す。 選手たちは同スタジアムに行かない日も、校内のトレーニングルームで松田さんらの教えをベースに鍛錬を重ねている。岩嶋敬一部長(60)は「学校で行うトレーニングの充実度も、選手たちの意識も高まった」と感謝する。 「選手たちは真剣に取り組んでいて、筋肉量が増加するなど効果が出始めている」と松田さん。3月18日に開幕するセンバツ大会では「きついトレーニングの成果を存分に発揮し、楽しみながら力を出し切ってほしい」と願っている。