三菱自動車「i-MiEV」の市販化を発表。世界初の量産電気自動車は、軽ながら高級車並みの459.9万円でデビュー【今日は何の日?6月5日】
●MRの軽自動車i(アイ)をベースにしたi-MiEV誕生
その後、長く実用的で市販化されたEVは登場せず、量産初となるEVがi-MiEVだったのだ。ベースとなった2006年に発売された軽自動車のi(アイ)は、近未来的なタマゴ型のフォルムとMRレイアウトが特徴の革新的な軽自動車だったが、軽自動車としては贅沢な仕様で価格も高かったことから、販売は期待したほど伸びなかった。 i-MiEVは、ミッドシップのエンジンの代わりに、最高出力47kW(64ps)/最大トルク18.4kgmを発生するモーターを搭載し、200kgを超える16kWhのリチウムイオン電池は床下に配置された。 モーターのトルクバンドが広い特性を利用し、トランスミッションを使わず、モーター回転を減速する減速ギアとデファレンシャルギアを一体化したギアボックスを介し、後輪駆動で走行。バッテリーの搭載によって車重が1100kgほどあったi-MiEVだが、EVらしい優れたレスポンスと力強い加速でガソリンターボ車を上回る動力性能を発揮した。
●2021年に販売を終了するも翌年eKクロスEVで復活
i-MiEVは、量産初のEVということで注目され、評価を受けた一方で、課題は価格が高いことと航続距離が短いことだった。 価格は459.9万円と高額だったが、最大138万円程度の補助金を受け、さらにエコカー減税によって重量税と取得税が免税される。実質的には、300万円前後まで下がるが、低価格を求める軽自動車のユーザーにとっては、高価な買い物だった。 また、満充電時の航続距離は160km(10・15モード)で日常ユースには充分だったが、一方でエアコンを使用したり、高速走行を続けると100kmを切ることが多く、ユーザーの一部からは不満の声も聞かれた。 2010年12月には、日産自動車から小型車のEV「リーフ」が航続距離200km(JC08モード)、価格376万円で登場、その後も進化したことでi-MiEVの存在感は薄れてしまった。結局、i-MiEVは一定のユーザーを獲得しながらも、累計販売台数約2万3700台をもって2021年3月に販売を終えた。 しかし、三菱はEVの開発を諦めず、約1年あまり経った2022年6月に、「eKクロスEV」が日産「サクラ」とともに復活を果たしたのだ ・・・・・・ eKクロスEVは、車両価格293.26万円でバッテリー容量20kWh、航続距離180km(WLTCモード)を達成。JC08モードのi-MiEVの航続距離180kmは、WLTCモードに換算するとおおよそ144kmに相当する。i-MiEV発売当社の価格が459.9万円だったことからも、12年の間にリチウムイオン電池と電動パワーユニットがいかに進化したかがよく分かる。 毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
竹村 純