越前和紙を使った川瀬巴水の「新版画」が並ぶ作品展=福井県越前市の紙の文化博物館

　明治から昭和期にかけて浮世絵を復興した「新版画」を代表する作家、川瀬巴水（はすい）（1883～1957年）の作品展「新版画と越前和紙　川瀬巴水展」（福井新聞社後援）は7月11日、福井県越前市の紙の文化博物館で始まった。新版画の確立に欠かせなかった越前和紙に、日本の原風景や庶民の暮らしが表現された約100作品が並んでいる。 　浮世絵の近代化と再興を目的に制作された新版画は、江戸期の浮世絵に比べて刷りの回数を格段に増やしたことによる緻密さや臨場感が特長。欧州など海外から高い評価を集めた。 　国際新版画協会（千葉県）の鈴木昇会長（75）が所蔵する巴水作品のうち、当時制作された初刷り約70点と、残された版木で後に制作された後刷り約30点を展示した。 　巴水は全国を巡りながら版画の元となる風景画を描き、旅情詩人と呼ばれた。「東京二十景」は、1923年の関東大震災後の復興で近代化する東京にあって江戸情緒が残る風景に目を向けた作品群。代表作「芝増上寺」は、朱門を背にして吹雪の中を傘をすぼめて歩く女性の姿が巧みな構図で描かれている。 　新版画は、ほぼ全てに越前和紙が使われていた。和紙職人の第8代岩野市兵衛が奉書紙を版画家に送ったのがきっかけで、発色の良さと丈夫さが認められ、旺盛な需要に応じた創作を支えた。 　巴水の新版画は、米アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏も収集していたとされる。鈴木会長は「新版画に使われた越前和紙の尊さを地元の人にも再認識してもらいたい」と話している。 　9月29日まで。前期は8月19日までで、21日からの後期は別の約100作品を展示する。同日午前10時から、鈴木会長の特別講演会を開く。入館料300円。火曜休館。