【MotoGP】オランダGP完全勝利のバニャイヤ、なぜそんなに強い? “左曲がりの王”マルケス「彼は高速右コーナーが特に速い」
ドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤは、MotoGPオランダGPでポールポジション、スプリントレース勝利、決勝レース勝利と完璧な週末を過ごした。 【バニャイヤ接近中】2024年MotoGP:ポイントランキング レースは共にライバルを引き離しての独走優勝であり、タイトル争いで暫定トップを走りオランダGPでは2位となったホルヘ・マルティン(プラマック)をして、今回のバニャイヤ相手には「勝つチャンスはなかった」と言わしめるほどの強さだった。 そもそも、バニャイヤの強さは初日から現れていた。彼はFP1、プラクティスを共にトップタイムで終えているが、バニャイヤがMotoGPクラスで初日トップタイムとなるのは今回が初めてのことだったのだ。通常、レースウィークを通じて調子を上げていくことが多いバニャイヤだけに、オランダGPでは好調さが際立っていた。 勝利は堅いと思われる中、レースでのミスを恐れていたか? そう尋ねられたバニャイヤはにべもなく「本当に素晴らしい瞬間だった」と答えた。 「今回だけではなく、2021年の終盤や、2022年の中盤、昨シーズンの序盤なども素晴らしかったけどね」 「何度もこうして素晴らしいフィーリングを感じられたことがあった。そのどの瞬間も、僕は自分たちのポテンシャルを完璧に理解できていたと思う。それに僕たちは上手く機能させられれば、毎回優勝争いをして、今回のようなレースウィークとすることができると分かっていた」 「こういうのはとても大きなモチベーションをもたらしてくれるよ。勝ってしかるべきと言われるレースに出るときは、2位ではもう負けなんだ。プレッシャーの面ではより大きくなるけれど、僕はそれを気にしていないし、楽しんでいるよ」 「このコースが大好きだし、素晴らしいフィーリングがある。だから問題は無かった。ここでの全てを楽しめた」 では、これほどバニャイヤがTTサーキット・アッセンで速かった理由はどこにあるのか? その答えの一端を、来シーズンのチームメイトであるマルク・マルケス(グレシーニ)は、バニャイヤが特に高速の右コーナーで強いことにあると指摘した。 「彼はこのコースの全域で飛ぶようだった」と、マルケスは言う。 「僕が言いたいのは、彼はここで超速いということだ。去年、一昨年と彼が凄く速いのは見てきたことだけど、特に高速の右コーナーで、彼は信じられないほどに速い」 バニャイヤが右コーナーで速い、というのはマルケスとは真逆だろう。マルケスの左回りコースでの速さは良く知られたもので、次戦ドイツGPのザクセンリンクなどは、彼が昨年敗れるまで無敵を誇ったコースだ。 オランダGPの区間タイムを見ても、バニャイヤが右コーナーを得意としていることはよく分かる。下記はセクタータイムのまとめだ。 セクター1 (スタートからターン5出口まで) 1. マルティン – 29.828s 2. バニャイヤ – 29.871s 3. ビニャーレス – 29.909s セクター2 (ターン6手前からターン8入口) 1. バニャイヤ – 13.335s 2. マルティン – 13.436s 3. ビンダー – 13.444s セクター3 (ターン8からターン12入口) 1. マルティン – 26.492s 2. バニャイヤ – 26.540s 3. アレックス・マルケス – 26.540s セクター4 (ターン12からフィニッシュ) 1. バニャイヤ – 20.794s 2. マルティン – 20.885s 3. ビニャーレス – 20.886s 4つのセクターのうち、バニャイヤが最速だったのはセクター2と4のふたつ。セクター3と4でも彼は速いが、セクター2と4は特に高速な右コーナーが含まれるセクターとなっている。 マルケスの語るように、彼はここで特に速さを見せているということだ。そしてミシュランの供給する2024年仕様のタイヤを上手く機能させられている最新型のマシンの存在も、バニャイヤのアドバンテージとなっている様子だ。 バニャイヤはオランダGPの勝利で、ドゥカティの歴史上最も勝利したケーシー・ストーナーに並ぶ23勝目を記録した。2024年シーズン序盤戦ではマルティンに先んじられてしまったが、カタルニアGP以降は常にマルティンを上回ってきている。 オランダGPの開幕を待つ期間には、2025年に8度王者マルケスがチームメイトになることが決まり、バニャイヤについてチーム内の力関係などを巡る様々な言説が見られていた。 しかしオランダGPにおけるバニャイヤの走りは、ドゥカティが2024年シーズン開幕を前に契約延長を果たした理由を説明するものであり、2025年にマルケスを相手にしても簡単には負けないだろうということを納得させるものだったと言えそうだ。
Lewis Duncan