「国語と国文学」創刊100年 記念特集で研究の歴史振り返る
東京大学国語国文学会が編集する「国語と国文学」(筑摩書房発行)が、創刊100年を迎えた。11月号=写真=は特集を組み、上代や近代、国語など企画当時に所属した教員らが執筆を担当した。各分野の研究の歴史と現状が分かる。
「国語と国文学」は1924年に創刊され、国文学や国語学研究の最前線を伝える。今号の特集は一見、時代から超越した存在に見える国文学研究が、実は時代の流れに影響を受けていると感じさせ、目をひく。
鉄野昌弘教授の「上代文学研究の戦後二十年――久松潜一・西郷信綱を中心に――」は、戦争中に『古事記』や『万葉集』が多く取り上げられたため、戦後はいかに研究者たちがその事実を反省し、研究を積み上げたかを記す。高木和子教授の「平安文学研究の百年を振り返る」は、大学紛争を経た1970年代に既存の権威となりがちだった源氏物語研究を、若い世代がどう乗り越えようとしたかなども紹介している。
同誌は若手研究者の登竜門にもなっている。安藤宏名誉教授は、「教育と研究の連携を深めることが改めて大切だと思った」と話す。