<春再び―市和歌山の挑戦>/下 身体能力鍛え抜く フィジカル、夢舞台で発揮へ /和歌山
100メートル、200メートルを数十本ひたすら走り、ウエートトレーニングに取り組む毎日。「今までの野球人生で、一番つらかった」と長尾修平投手(2年)が振り返る2021年末の練習メニューだ。打球の質を上げるため、筋力強化を目指した。 練習納めの21年12月28日には、部員数と同じ44本の100メートルダッシュをした。気持ちを盛り上げようと、高校野球に絡んださまざまな音楽を流す中、最後の一本は皆で手をつないでゴールした。センバツ出場を信じ、厳しい練習を耐え抜いた選手たち。そのほとんどは涙していた。 2年連続の出場となった昨秋の近畿地区大会だが、県予選からの苦闘は続いた。神戸学院大付との初戦は硬さもあり、投打がかみ合わなかった。「緊張が勝った」という先発の米田天翼投手(2年)は、五回まで毎回走者を背負う投球。五回終了後、半田真一監督(41)は「また自分の力を出さんと終わるんか」と叱咤(しった)した。「自信をもって、思いっきりいけ」との言葉に押され、六回からは一人の走者も許さず、7奪三振と修正力を見せた。攻撃陣はわずか4安打だったが、2―1で何とか勝ちきった。 準々決勝で対戦した天理(奈良)には、力の差を見せつけられた。三回、相手打線が2巡目に差し掛かるあたりから3長打を含む4連打を浴び、一気に3失点。四、五回も立て続けに失点し、松村祥吾主将(2年)は「コールド負けになるんじゃないかと思っていた」と胸の内を明かした。ただ、この日も先発した米田投手は「これ以上差が開くと勝ち目がない」と、ここでも修正力を発揮。六回以降は粘りの投球を見せ、走者を許すも無失点で切り抜けた。 打線は七回、米田投手、森大輔選手(2年)の連打による好機から内野ゴロの間に1点返した。しかし、追加点が奪えなかった。相手守備陣の大胆なシフトに遭い、普通なら安打となる打球をアウトにされた。半田監督は「流れを持ってこれず、『ここぞ』のところでとどめを刺せないのが課題」と振り返り、身体能力向上に取り組むことにした。 個々の強化に加え、一体感を増したチームは、先輩たちに続いてのセンバツ切符を得た。冬場に鍛え抜いたフィジカルを発揮する大舞台は、間近に迫っている。【橋本陵汰】