楽天・辰己涼介がパ・リーグを代表するセンターになるまで
関西の大学球界に辰己あり
辰己の名前が全国区となったのは2年春に出場した全日本大学野球選手権でのことだ。 初戦の東日本国際大戦では3番、センターで出場。相手の先発は現在巨人で中継ぎとして活躍している船迫大雅(ふなばさまひろまさ、当時2年)だった。 第1打席でショートへの内野安打を放つと、第3打席にはライトへのツーベースを放って攻略。2番手で登板したサウスポーの有馬昌宏(元・神奈川フューチャードリームス)からもセンター前ヒットを放つなど3安打の活躍を見せたのだ。 チームは続く東海大北海道戦で敗れたものの、辰己は2試合で8打数4安打と見事な成績を残し、大会後には2年生ながら大学日本代表にも選ばれた。 メンバー選考合宿の紅白戦では同学年ですでに名城大のエースだった栗林良吏(現・広島)から右中間へのスリーベースを放ち、日米大学野球選手権でもホームランを放っている。 この頃から関西の大学球界に辰己ありというのは関係者の間での共通認識になったと言えそうだ。 その後もリーグ戦、全国大会、大学日本代表などでプレーを見る機会は多かったが、特に記憶に残っているのが4年春。2018年5月19日に甲子園球場で行われた近畿大との試合だ。 ヒットこそ第1打席の1本のみだったが、続く打者の長打で一気にホームへ生還。その後は2つの四球を選び、7回には再び味方のタイムリーでホームインしたが、いずれもそのベースランニングは迫力十分だった。 また広い甲子園の外野を縦横無尽に走り回り、フライも3度処理。当時のノートにはプレーぶりについてこう書かれている。 「反動をつける動きが小さくなり、しっかり体を残して長くボールを見られるようになった。 少し力んで上半身の力に頼る時もあるが、体の回転の鋭さ、ヘッドスピードともにアップしたように見える。低めの変化球に対してもしっかり見極めて四球選ぶ。 (中略) センターから見せる返球も勢い十分で、強肩はプロでも上位のレベル。守備範囲も広く、落下点に入るまでのスピードも素晴らしい」 大学生の場合、下級生でブレイクすると上級生ではマークが厳しくなって苦しむケースも多い。しかし辰己は4年春にキャリアハイとなる成績を残してMVPと首位打者にも輝いており、着実にレベルアップしていたことがよくわかる。 プロでも6年続けて100試合以上に出場しており、成績を伸ばしているのも見事という他ない。 2024年オフシーズンに行われているプレミア12の侍ジャパンにも選ばれるなど、周囲からの期待も年々高くなっているが、2025年以降もさらに成績を伸ばしてパ・リーグだけでなく球界を代表する外野手となることを期待したい。
TEXT=西尾典文 PHOTOGRAPH=松尾/アフロスポーツ