中国・蘇州で愛される「キッシンジャー氏のハニーレシピ」
【CNS】中国東部の江蘇省(Jiangsu)蘇州市(Suzhou)は「3回訪れたら忘れられない」と言われる魅力的な街だ。冬も深まり、蘇州市内にある南園賓館(Garden Hotel Suzhou)では、料理人たちが蘇州人にとって大切な冬至のうたげの準備を始めている。 江南地方の特色ある料理の中でも、ひときわ目を引く料理名が「キッシンジャー氏のハニーレシピ」だ。蘇州の伝統料理になぜ元米国務長官の名前が付けられているのだろうか。 蘇州人は数ある肉製品の中でも特に中華ハムが大好きだ。名物料理にはハムが欠かせないが、蘇州出身の小説家である葉生濤(Ye Shengtao)が書いた「潘先生在難中」でも、潘家の少年は逃亡中も、ご飯を作るための中華ハムのスープを忘れなかったほどだ。 中華ハムは風味や鮮度を高めるために使われることが多く、ハムを主役にするためにはハチミツ焼きのハニーレシピが必要とされる。 中国の美食家だけでなく、米国からはるばる中国に来たヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)氏もまたハニーレシピに感銘を受けた一人だった。キッシンジャー氏は南園賓館で3回食事をしたが、そのたびにハニーレシピは欠かさなかったと言われる。 キッシンジャー氏は1974年11月に初めて蘇州を訪問した。蘇州が米国のVIPを迎えるのは初めてであり、宴会で提供される料理のメニュー選びについては、南園賓館の有名シェフらが話し合い、蘇州の郷土色豊かな料理を採用することにしていた。 温かい料理のハイライトは、カニ卵とフカヒレ、ハトの卵、アヒルのローストなどだった。なかでもキッシンジャー氏が最も気に入ったのが「ハニーソースのレシピ」だった。 1982年10月、キッシンジャー夫妻は2度目に蘇州を訪れ、同じように南園飯店に宿泊した。晩さん会の席上、テーブルの上に置かれたハチミツ風味の料理を見たキッシンジャー氏は「私のお気に入りの料理を覚えていてくれてありがとう」と興奮気味に言ったため、通訳は、このレシピは特別なものだと告げた。キッシンジャー氏は「この料理の名前は何ですか?」と興味深げに尋ねたが、通訳はユーモアたっぷりに「キッシンジャー氏のハニーレシピです」と答えたと言われる。 以来、蘇州では「キッシンジャー氏のハニーレシピ」という名前が広まり始めた。1994年、キッシンジャーが3度目に蘇州を訪問した際には、「キッシンジャー氏のハニーレシピ」という名前で料理が食卓に出されている。 キッシンジャー氏は昨年の11月29日、100歳で死去した。南園賓館には、キッシンジャー氏が「ハニーレシピ」を食べる写真が残されている。写真の中の彼は目を伏せ、思慮深い表情を浮かべながら、ハニーレシピをじっくり味わっているように見える。(c)CNS/JCM/AFPBB News ※この記事は、CNS(China News Service)のニュースをJCMが日本語訳したものです。CNSは1952年に設立された中華人民共和国の国営通信社です。