これは次世代3シリーズの予告編だ!BMWビジョン・ノイエ・クラッセの真意をデザイントップに聞く【モビリティショーで見つけたデザインの未来】
i5やiX2は次世代への架け橋
IAAミュンヘンで『ビジョン・ノイエ・クラッセ』を発表したとき、報道によるとエイドリアンは「世代をひとつ飛ばしたようなデザインだ」と語ったという。その主旨をあらためて問うと、「これが量産車になったとき、3シリーズの歴史に照らしていつもより大きなステップを刻んだことに気付いてもらえるだろう。そういう意味で『世代をひとつ飛ばした』と言ったのだ」 コンセプトカーがジャンプするのは当たり前。エイドリアンが意図するデザイン革新の真価は、BEVになる次世代3シリーズが登場して初めてリアルに実感できることになるようだ。 一方、今回のジャパン・モビリティ・ショーでは新型X2/iX2が世界初披露された。輸入車では唯一のワールドプレミアだ。そのデザインを見ると、少し違う感想が出てくる。 新型X2/iX2のフォルムは他の現行BMW車に比べ、線や面の抑揚を控えていて少しシンプルに見える。『ビジョン・ノイエ・クラッセ』はボンネット中央をえぐり、それを左右のキドニーの間に延ばしているが、この手法は量産車では新型5シリーズ/i5に始まって新型X2/iX2に受け継がれたものだ。 新型5シリーズ/i5や新型X2/iX2は現行モデルと次世代のデザインをつなぐ架け橋の役割も担っているのではないか? エイドリアンがこう答える。 「そうだね。2025年以降、すべての車種が新しいデザイン言語で一新される。しかしあなたが言うように、新しいデザイン言語のいくつかの要素はすでにi5やiX2で示している。それらは2年後も販売しているクルマだからね。『ノイエ・クラッセ』の量産車が登場したときに、人々がi5やiX2とのつながりでデザインを理解してくれることを期待しているよ」
パノラミックビジョンに込めた体験価値
インテリアのデザインも野心的だ。乗員の前にディスプレイを壁のように並べる例が増えつつある昨今だが、BMWはそのトレンドに追従しない。代わりに設けたのが、ウインドシールドの下端部分に、言い換えればインパネ上面の奥に幅一杯に広がるディスプレイだ。これを「パノラミックビジョン」と呼ぶ。 「BMWブランドのコアにあるドライビング体験を考えた」と、エイドリアンはその発想の原点を語る。「すべてのBMWはドライビング体験を軸に開発されている。だからドライバーの前にディスプレイの壁など設けたくない。ドライバーには前方の路面にフォーカスしてほしい」 「それに、私たちは15年近くも前からヘッドアップディスプレイを採用しており、お客様に好評だ。それを拡張すべきだと考えて、『パノラミックビジョン』のアイデアに至った。高い位置にあるので、路面にフォーカスしながら瞬時に視線を移しやすい。より良いドライビング体験を提供できるし、ドライバーだけでなく乗員誰もがそれを見ることができる。多くの利点があると思っている」 「パノラミックビジョン」は薄くてワイドなディスプレイ。天地寸法は5cmほどだろうか? それでもそのぶんインパネ上面の高さを抑えなくてはいけない。インパネ内部にはさまざまなユニットが詰め込まれており、高さを下げるのは技術的に容易なことではなさそうだが・・。 「その通りだが、だからこそコピーされにくい。『パノラミックビジョン』を採用するために、エンジニアリングを一から考え直さなくてはいけなかった。それはつまり、同じことを後追いでやるのは非常に難しいということだ。『パノラミックビジョン』はBMWらしいというだけでなく、今後何年も競争のなかで優位に立てるものだと考えている」 「インパネのボリュームを減らしたかった。ドライバーには運転に集中してほしい一方、それ以外の乗員には広々感を感じてほしいからね。その狙いに『パノラミックビジョン』を使った新しいレイアウトが役立った」 ディテールでひとつ気になるのが、垂直方向にスポークを配したステアリングホイールである。ユニークなデザインだが、いったい何のメリットがあるのだろう? 「2つの理由がある。ひとつはステアリング・スイッチの操作性だ。スイッチを従来より少し深いところに置いている。従来のステアリング・スイッチは親指を手前に引いてから操作しなくてはいけないが、これはステアリングを握ったそのままの状態から操作できる。水平方向にスポークがあったら、実現できないことだ」 「もうひとつは、ステアリングホイールの内側から見るディスプレイをなくしたことだ。だからスポークを垂直方向にすることができた。スポーツカーやレースカーではステアリングの頂点に目印を付けることがあるが、垂直のスポークはそれと同じ効果を発揮する。これはBMWらしさとして認識される要素であり、ドライビングの愉しさを強調するものだと考えている」 2025年の次世代3シリーズから始まるBMWの新時代。デザインは大きくジャンプしそうだが、それが見る人・使う人に伝えるブランド価値が揺らぐことはない。そう確信できるインタビューだった。
千葉 匠
【関連記事】
- 新型ランクル70にモデリスタが登場!本格的なクロカンスタイルでランドクルーザーらしさ全開!
- 日本レースクイーン大賞のファーストステージ50人を紹介!【Part1】相沢明日加、相沢菜月、葵成美、蒼雪乃、青山あいり、赤城ありさ、朝倉咲彩、阿比留あんな、安西茉莉、安西まりな
- 欲しければラスト・チャンス! マツダ3列シートの最上位SUVはどうですか? マツダ CX-8 | これがオーナーの本音レビュー! 「燃費は? 長所は? 短所は?」 | モーターファン会員アンケート(2023年11月版)
- レクサスのBEV専用SUV「RZ300e」が登場! リヤサス周りを一新し“自然な走り”にこだわったFWDモデル
- ホンダ車は残存価値高し!!シビックやアコードなど4車種が米国ALG社の残存価値リストの各セグメントで第1位を獲得