スターリンクは「黒字領域」なのか-マスク氏、コスト明かさず
(ブルームバーグ): 米宇宙開発企業スペースXは世界で最も評価額の高い未公開企業の1社だが、同社の人工衛星事業「スターリンク」はまだ稼ぎより出費が多い。
スペースXの財務に詳しい関係者は、同社は数百万台の地上端末を出荷するたびに数百ドル単位の損失を出していると述べ、スターリンク事業は「黒字領域」にあるというイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)ら経営陣の主張に疑問を投げかけている。
非公開情報だとして匿名を条件に語った関係者によれば、宇宙ベースのインターネットサービスを260万余りの顧客に提供するスターリンクは、非公開の数値を投資家により良く見せようと、衛星を宇宙に送る多額の費用を抑えて見積もり報告することがあるという。
スペースXの会計について、関係者は「サイエンスというよりアート」だと表現し、営業・継続ベースでは実際には利益を上げていないと主張している。
財務内容の公表が義務付けられていない非上場企業が、資金調達の際に数字を丸めたり調整したりすることは起こり得る。資金を使い果たしながらも、新たな資金集めに頼り何年も経営を続けている非公開企業もある。
80億の潜在顧客
マスク氏が昨年、スターリンクのキャッシュフローが「ブレークイーブン(損益分岐点)」に達したとX(旧ツイッター)に投稿した際、スターリンクのバランスシートを知る関係者は、同氏が投資家側に示唆していたよりも黒字の四半期は継続的でなかったと指摘した。マスク氏はXのオーナーでもある。
スペースXのブレット・ジョンセン最高財務責任者(CFO)は先月のワシントンでの会議でマスク氏のコメントについて尋ねられ、「われわれは現在、衛星事業でプラスのキャッシュフローと黒字領域にいる」と述べた。
マスク氏の電気自動車(EV)メーカー、テスラが世界の自動車産業を根底から覆したように、スペースXはロケットと人工衛星の市場を大きく変えようとしている。