現代の名車になる? マツダの次世代占う「CX-5」の出来
先月発売されたマツダのSUV(スポーツタイプ多目的車)新型CX-5。モータージャーナリストの池田直渡氏は、現代の名車になる可能性があるクルマだと評します。何がどのように変わったのでしょうか。 【写真】車は真っ直ぐ走らない? ハンドリングの良い悪いとは
◇ マツダがここ数年、すっかりイメージチェンジを果たしたと思っているのは筆者だけではあるまい。「魂動」デザインを採用した2012年の初代CX-5以来、マツダは矢継ぎ早に商品を投入して、デミオ、CX-3、アクセラ、CX-5、アテンザ、ロードスターという新世代ラインナップを完成させた。これらをマツダは第6世代商品群と呼ぶ。
「第6世代」とは何だったのか?
リーマンショックが起きた時、その震源地であった米国のメーカーが負った手傷は他国メーカーより大きかった。急激に財政が悪化したフォードは、財政再建のためやむを得ず傘下のブランドを売却した。その結果、前触れも無くフォードからのユニット供給を受けられなくなったマツダは、全ラインナップを一斉に自社開発しなければならない羽目に陥った。エンジンひとつ取っても下は1リッター級から上は3リッター級まで様々なユニットが必要だ。 第6世代の商品群を見渡して見ればわかるが、マツダの規模でこれらのクルマを全部一斉に新規に作り起こすのは簡単な話ではない。だが、グローバルマーケットを睨めばこのラインナップのクルマは一台も無くせない。デミオを止めれば欧州やアジア・マーケットの販売店の死活問題になるし、アテンザを止めれば北米マーケットが崩壊する。
しかも人も資金も決して豊かではない。座して死を待つ訳にはいかないし、どの車種も止められない。その中で、手持ちのリソースで可能な戦略をマツダは必死で考え、実現可能なプランを作り上げた。それは「数を競わない」ということだ。かつてマツダの人が卑下して言った言葉だが「ウチの全車種を合計してもカローラに敵わない」。そんな考え方はしたことがなかったが、そう言われてみればそうだ。トヨタは成績の良い月なら、1車種で国内月販3万台越えとかの途方もない数を売ることもある。 その中でマツダというブランドを何とか生き残らせていこうと思えば、マツダ全車種に統一的なイメージを持たせるしかない。そうしなければ埋没してしまうのだ。だからマツダは「魂動デザイン」で全商品を括り、ブランドの埋没を防いだのだ。 そういう考え方に基づけば、万人に受ける無難なデザインはあり得ない。嫌いな人には嫌われても良いが、好きな人が惚れ込む商品を作る。そう決めたのだ。マツダはそれを「2%に好かれるクルマ」と言う。グローバルに年間約1億台のクルマが売れている現状で、2%なら200万台。現状で約150万台のマツダにとって、それは諦めでも何でもなく、十分な高望みの数字だ。だから商品の個性を尖らせる方向にシフトした。そうした特性を持たせつつ、コンピュータ・シミュレーションとコモンアーキテクチャー(モジュール設計)によって、徹底的に省力化と高性能化を追求して商品を作り上げた。コモンアーキテクチャーについてはあらためて書くことがあると思うが、それは決死の綱渡りだった。