国内大手メーカーとして初めてPNDに本格参入したソニー「nav-u(ナブ・ユー)」《カーナビ名迷機図鑑》
PNDは手軽さや低価格から人気を拡大
市販のGPSカーナビの黎明期の1990年代前半、東芝やNEC、シャープ、カシオ、マスプロなど、数えきれないほどの電機メーカーが続々とカーナビ業界に参入。百花繚乱ともいえる華々しい時代だった。 【詳しい画像を見る】 そんな中でも順調にシェアを拡大し、上位メーカーの一角であったのが“ソニー”だ。 1992年にCD-ROMナビの「NVX-1」で参入し、その後DVDナビ、HDDナビへとメディアを変更するとともに個性あふれる製品を続々と投入してきたが、2005年に突如としてカーナビ事業から撤退をする。 そして2年後の2007年、やはり突如として復帰してリリースされたのが「nav-u NV-U1」だ。 nav-u(ナブユー)は、従来のソニー製ナビとは共通点が少なく、ウォークマンなどと同じポータブル機器としてのスタンスで開発された。 当時のカーナビ業界は「オンダッシュ型」、「AV一体型」に加え、第3の勢力としてメディアにフラッシュメモリーを使用したコンパクトなポータブル型ナビ「PND(ポータブルナビゲーションデバイス)」が韓国や台湾から流入し始めていた。 PNDは手軽さや低価格から人気を拡大しつつあったが、アジア各国で売られている製品に、国内向けの地図を組み合わせて仕立てていたため、日本の高性能なカーナビに慣れた人にとっては興味はあるものの今ひとつ踏み切れない存在でいた。 そこでnav-uは日本人による日本人のためのPNDとして生まれ、これが国内大手メーカーとしては初めてのPND本格参入となった。
もちろんソニーが本気で手がけるだけに、従来からの上級カーナビと同等の高性能を目指した志の高いモデルだった。 特に自車位置の測位精度へのこだわりは強く、GPSだけでなく加速度センサーや気圧センサーを本体に内蔵。 ビル街やトンネル内などGPS電波が受けにくい場所でも正確な自車位置表示を実現。さらにオプションにはワンタッチで接続ができるVICSビーコンユニットを用意し、渋滞回避ルート探索も可能だった。 このほか付属DVD-ROMとPCを利用して地図データを入れ替えたり、メモリースティックによってデータを拡張したりすることもできるなど、ユーザーの好みに合わせたカスタマイズも楽しめた。 コントロールはタッチパネルだが同社のPDA端末で培った技術を投入したジェスチャーコマンドにより、モニター上で円を描けば地図の拡大や縮小、山を描けば自宅へのルート探索が行えるなど使い勝手に優れていた。 また、付属スタンドには吸着力に優れたゲル素材吸盤を使用。現在では当たり前となっているものだが、車載用としては「nav-u」が初めての採用だった。 「nav-uシリーズ」の高性能ぶりは高い人気を得て、その後もバリエーションを増やして進化を続けた。 だが、5年後となる2012年にライバルが増えたことやスマホ向けカーナビアプリの登場などにより、ソニーは再びカーナビ業界から撤退をすることになる。
<文/浜先秀彰>