669万6000円のハッチバックが個性的すぎた!!! 新型DS 4の独創性に迫る「こんなクルマ、ほかにはない」
DSオートモビルの「DS 4」に設定された特別なモデル「エスプリ・ド・ヴォヤージュ」に小川フミオが乗った。独創性あふれるコンパクトハッチバックに迫る! 【写真を見る】新型DS 4 エスプリ・ド・ヴォヤージュE-TENSEの細部(19枚) インテリアも超個性的だ!!!
すべてが個性的
オシャレなクルマがあったら乗りたい……そんな人に向いているのが、フランス生まれのDS 4だ。とくに、2023年7月に発売されたDS 4 エスプリ・ド・ヴォヤージュはおもしろい。 「フランスの名高いファッションブランドが新作を発表するコレクションから着想を得て企画された」と、メーカーが説明するのがエスプリ・ド・ヴォヤージュだ。 今後は年に一度、発表していくんだそう。今回の“感性豊かな旅の精神”なるテーマは、このDS 4と、上級モデルのDS 7に設定された。 試乗したモデルのドライブトレインは、「E-TENSE」と名付けられたプラグイン・ハイブリッド。132kWの最高出力と250Nmの最大トルクを発揮する1.6リッターガソリンエンジンと、81kW、320Nmのモーターで前輪を駆動する。 なにより個性的なのは、先に触れたように、スタイルだ。ひとことでいうと、個性にあふれている。ボディパネルからアウトサイドミラー、そしてウインドウの開閉スイッチまで、いたるところが、ちょっと常識はずれ、いや、個性的なのだ。 DSの母体ともいえるシトロエン自体が、とにかく、デザイン的にほかと違うことをよしとしてきたのは、よく知られた話。 1955年発表の「DS」(これがいまのDSブランドのネーミングの由来)にはじまって「C6」(2005年)にいたるまで、ほかとは一線を画したデザインを採用してきた(その後はわりと“常識的”なデザインに)。 ただ、シトロエンが意図して“変わった”デザインを採用していたのかどうか。ひとつ言えるのは、自分たちが気持ちいいとか納得いくとか、そういう点をなにより重視してクルマづくりをしていたように思う。
リラックスしたドライブが可能
今回のDS 4 エスプリ・ド・ヴォヤージュE-TENSEも、心地よさという点では、なかなか他の追随を許さない。ふわりふわりと路面のどんな凹凸からの衝撃も吸収してしまうスーパーコンフォタブルなシトロエン「C5エアクロス」とまではいかないまでも、乗り心地はいいし、それでいて、ハンドルを切ったときの車体の動きもしっかりしている。 シートのクッションもいいのだろう。有機的ともいえるやはり独特な形状のシートにからだをあずけていると、気持ちよくて、どこまで走っていっても疲れなさそう。 EVレンジで56km(WLTC)と発表されているように、モーターがカバーしてくれる領域もそこそこ長い。市街地での通勤などなら、ほぼモーター走行で補そうだ。日本で使うために、CHAdeMOによる急速充電に対応しないのはやや痛い。 モーター走行は、発進時からトルクがたっぷりあるため、“ふわり”と先述した乗り心地とよく合っている。その気になれば速いペースで走れるいっぽう、リラックスしたドライブが可能だ。 全長4415mmのボディに2680mmのホイールベースの組合せなので、エクステリアは比較的コンパクトにまとまっているように見える。ただ、前後フェンダーの張りだしを強調した面づくりによって、角度によっては力強く見える。 パッケージングは、スタイルの犠牲になっていない。そこは機能主義も大事にするシトロエン/DSのクルマづくりの伝統が継承されていると感じられる点。後席を含めて室内はおとな4人に十分な空間が確保されている。 エスプリ・ド・ヴォヤージュのエクステリアは、放射線状のパターンがレザーエッチングされたアウトサイドミラーカバーと、「クリスタルパール」と名づけられた外装色が特徴。 インテリアも特別感がある。「ペブルグレー」なるシートをはじめ、「グラナイトグレー」のダッシュボードとそこに施されたアールデコ風というのか、やはり放射線状のパターンが目をひく。 ドア内側とセンタートンネルにはソフトな感触の内装材(シートと同色)が貼られ、数本のラインによる加飾が施されている。とにかく、「こんなクルマ、ほかにはない」と、内外装が強く主張しているのだ。 ひとつ惜しいと私が思うのは、内装の質感だ。せっかく凝った造型なので、素材には金属やアクリルを使ってほしいし、操作したときの感触と操作音にももう少し凝ってほしかったなぁ、と、やや残念な思いにとらわれた。 もうひとつ、DS 4 エスプリ・ド・ヴォヤージュE-TENSEには、印象的な要素がある。価格だ。全長4.4mのハッチバックスタイルで、669万6000円のプライスタグは、ちょっと冒険的。あらゆる点で独自の価値観をもったモデルなのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)