なぜ東京の会社がBリーグ・仙台89ERSのオーナーに? 「しゃしゃり出るつもりはない」M&A投資の理由とは
オーナー側から見た投資の理由は?
プロ野球やJ1に比べれば小規模な投資ではあるものの「オーナー側」から見た投資のメリットについて、河本社長はこう説明する。 「一番の目的は企業価値向上です。我々はまだまだ無名で『ベンチャー』の会社です。だからこそ人材確保が課題になります。企業価値を向上するには色々な方法がありますけど、知名度が上がって、良い人材が採れる効果も期待しています」 霞ヶ関キャピタルはショッピングセンター以外にも、冷凍冷蔵や冷凍自動倉庫等の物流倉庫、ホテル、終末期医療のホスピスといった施設の開発事業等を展開している。B to BからB to Cにも領域を広げようとする中で、仙台89ERSと関わることによる一般消費者向けの宣伝効果もあるはずだ。
仙台89ERの今後は?
まだ協業は始まったばかりで、クラブ側の成長戦略については「これから」の部分が大きい。ただ仙台89ERSは「資金」「人」という成長に不可欠なリソースを手に入れた。今回のディールがWin-Winの効果を生む期待感は間違いなく大きい。 志村社長は新オーナーと組むメリットをこう強調する。 「(霞ヶ関キャピタルは)主力事業でしっかりお金を稼いで、また新たな投資をするサイクルを生んでいる会社です。我々にもそういうポテンシャルを感じていただいていることは嬉しいですね。(11月10日の会見直前に開催された)取締役会でも僕らと違う角度で、純粋に忌憚のない意見をいただけて、我々の判断の精度もどんどん上がっていくはずです。河本さんから『ワクワクします』とおっしゃっていましたけど、ナイナーズがまた新しいものを生み出せる、それを皆さんと一緒に見られることに大きなやりがいを感じています」 仙台89ERSは今回のディールでBプレミア参入3条件のうち2つ(アリーナ、売上)を満たすメドが立った。最大の課題は「ホームゲーム30試合で12万人以上」という集客だが、11月までのホームゲーム7試合は来場者数がすべて4000人を超えている。2022-23シーズンは19勝41敗と低調だった戦績も、今季は5割ペースとまずまずだ。今季の好調も相まって、霞ヶ関キャピタルの経営参画は仙台89ERSの今後に期待を持たせる発表だった。 <了>
文=大島和人