バレーボール男子代表、飛躍のカギはアニメとサーカス? 52年ぶりの感動を
【ベテラン記者コラム】バレーボールの男子日本代表が、6月30日(日本時間7月1日未明)に行われたネーションズリーグ(VNL)決勝で、惜しくもフランスに敗れたが銀メダルを獲得した。日本男子の主要国際大会での銀メダルは1977年のW杯以来。試合を見ていて、子供の頃のあこがれを思い出した。 【写真】ミュンヘン五輪で優勝し、選手に胴上げされる松平康隆監督=1972年9月9日 72年のミュンヘン五輪で、松平康隆監督率いる日本は見事に金メダルを獲得した。当時、同五輪までの過程を同時進行で描いたアニメ『ミュンヘンへの道』が放映されており、小学4年だった私は2歳上の兄と、毎週日曜日にはテレビの前で手に汗を握っていた。 放映されていたのは72年4~8月で全17話。金メダル獲得後の9月に、五輪の様子を実写で伝えた特別編が1回あった。 64年東京五輪で銅メダルを獲得した日本男子のコーチだった松平氏は、大会後に監督就任。金メダルを獲得した女子「東洋の魔女」のように世間の共感を得るチームになる必要があると、強化と並行してアピールにも力を入れた。身長の高い男子選手は女性や子供の人気を得られると、女性誌や少年漫画誌のグラビア特集企画などを次々に実現。そんな一環が『ミュンヘンへの道』だった。 実写とエピソード部分のアニメを合わせた映像で、選手たちが努力する姿が描かれた。この努力の先に金メダルがあるんだと、子供心に毎週ワクワクしていた私などは、松平氏の作戦が成功したことの証人といえよう。 金メダルの確証もない時点で、よくあれだけあおったものだと後になって思った。バレー担当記者となり、その点を松平氏に直接聞いたら、「まあ、負けたら日本には帰ってこられなかっただろうね」と笑っていた。 松平氏は他に類を見ない強化と、新しい発想による広報を融合させた。強化では、さまざまな速攻や時間差など、現在では基礎となったコンビを確立。選手にも新技を考えさせ、森田淳悟の一人時間差などが誕生した。 190センチを超えるビッグスリー、森田、大古誠司、横田忠義を若い頃から強化。一方、身長が高くても運動能力がなければならないと、逆立ちで9メートル以上歩けない者は五輪に連れて行かないと宣言した。これに大古が苦闘する姿は、アニメで大古が主役の回のメインエピソードとなっている。