奇跡の再結成、フェアーグラウンド・アトラクション涙と感動の35年ぶり来日公演初日
日本のファンが「世界で一番最初のリスナー」
そこからは初披露の新曲と『The First of a Million Kisses』の収録曲が、ほとんど等分に演奏されていった。素晴らしかったのは、そのどちらもが本当に同じ輝きを放っていたことだ。軽快なリズムに乗せて、壊れゆく世界にユーモラスな祈りを捧げる「What’s Wrong With The World?」。マイクスタンドを握りしめたソウルフルな歌唱が心に残った「Gatecrashing Heaven」。ゆったりとワルツを踊りながら披露した「Last Night (Was A Sweet One)」。どの楽曲も着慣れたシャツのように、しっくり身体に馴染んでいる。鍵盤アコーディオンの旋律でそっと歌に寄り添うグラハム・ヘンダーソンと、勘所を押さえたビブラフォンで楽曲を彩るロジャー・ボジョレー。サポート2人との噛み合い方も申し分ない。 「9月にはアルバムを出す予定。あなたたちが世界で一番最初のリスナーね(笑)。実は私たちが解散を決めたのは(1989年の)日本ツアーのときだった。だからもう一度、ここからスタートすることにしたんです」 ライブ中盤のMCで、エディー親しみを込めて客席にそう話していた。新しい楽曲を生み出し、この6人で演奏するのが楽しくて仕方ないのだろう。だからこそお馴染みの名曲たちも、単なる懐かしさを超えて心に迫ってくる。ライブ終盤では「Moon on the Rain」「Clare」「Fairground Attraction」と往年の名曲を矢継ぎ早に披露。大ヒット曲「Perfect」では客席にシンガロングの渦を作り出していた。ぎゅうぎゅうに詰まった観客が、楽しそうに身体を揺らして歌う。ライブ会場であんなに幸せな光景を目にしたのは正直、久しぶりだ。 本編ラストは「BEAUTIFUL HAPPENING」。6月19日、世界に先駆けて日本発売されたばかりのアナログEPのタイトルナンバーだ。“♪Some kind of beautiful happening/何か素敵なことが起こっているのよ”と、エディーはやさしく観客に語りかけてくれた。熟成して滋味にあふれるサウンドと相まって、そのメッセージが心にじんわり染み通っていく。畢生の名曲「Allelujah」を含むアンコール3曲も、酸いも甘いも噛み分けた人生の年輪を感じさせて、心が震えるほどすばらしかった。歳を重ねるのって悪いことばかりじゃない。そう心から感じられたライブだった。 文・大谷隆之
Rolling Stone Japan 編集部