南佳孝デビュー50周年ライブを開催 盟友・松本隆へ「また新作を作ろう」と決意を新たに
2023年9月21日にデビュー50周年を迎えたシンガーソングライターの南佳孝。CS放送「衛星劇場」では、50周年を記念して、9月24日に東京国際フォーラムホールCにて開催された、スペシャルイベント「50th Anniversary Live 南佳孝フェス」のライブの様子を12月23日(土)夜7時30分から放送。ライブでは自身のナンバーやゲストの楽曲を披露したほか、盟友・松本隆を招いての感慨深いトークも。本記事では、南のこれまでの活躍とともに、50周年のメモリアルライブを振り返る。 【写真】南佳孝、松本隆へ「また新作を作ろう」と決意を新たにした50周年ライブ ■南佳孝が歩んできた50年 南のデビュー作は、1973年の9月に発売されたアルバム「摩天楼のヒロイン」。細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂とともに組んでいた「はっぴいえんど」が解散したばかりの松本隆が、プロデュースした作品だ。 過去のインタビューで、会ったその日に「何かやろう」という話になったという南と松本。いまや南の代表作ともいえるアルバム「摩天楼のヒロイン」は、「一本の映画みたいなアルバム作ろうか」と話し合って作られたという。 言葉通り、A面とB面がそれぞれ男女の視点から、情感たっぷりの歌詞で描かれている。ロックとはまた違う洗練された色気のある音作りも、大きく評価された名作となった。 また南の楽曲は、著名なミュージシャンたちによるカバーでも知られている。たとえば郷ひろみがカバーした「セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)」は、南の代表曲の1つ。原題「モンロー・ウォーク」はその後も斉藤和義、クレイジーケンバンドなどによってカバーされ、長く愛され続けたナンバーだ。 他にも薬師丸ひろ子が「メイン・テーマ」というタイトルでカバーした「スタンダード・ナンバー」。南の「スタンダード・ナンバー」が男性目線の歌詞であるのに対し、薬師丸が歌う「メイン・テーマ」は女性目線の歌詞…というギミックがある。曲は同じながら、2曲が対になるような、作詞を担当した松本の粋な遊びが光った一曲だ。 映画「スローなブギにしてくれ」の主題歌「スローなブギにしてくれ(I want you)」も、28万5千枚というビッグヒットを飛ばした楽曲だ。いずれも南の艶っぽい歌声と、作曲・作詞を担当する松本のコンビネーションが生んだ70~80年代を代表するポップ・ミュージックたち。2人の先進的な感性と卓越した技量を、世に知らしめることになった。 さらに佐川急便、サントリー、資生堂といった企業のCMソングも手掛け、いまなお精力的にライブ活動を続ける南。そんななか迎えたデビュー50周年のライブが、9月におこなわれた「50th Anniversary Live 南佳孝フェス」というわけだ。 ■豪華ゲストたちと、80年代前半の懐かしい曲を落ち着いたアレンジで再現 南のデビュー50周年を記念したライブは、ゆかりのある豪華ゲストとの共演が見られることもあって前売りチケットが完売した。 満員となった会場から灯が落ち、流れるのはデビューアルバム「摩天楼のヒロイン」の1曲目に収録された「おいらぎゃんぐだぞ」。続くセットリストはデビューから80年代初期のオリジナル作品が中心。リアルタイムで聞いていた世代にとっては懐かしく、若い世代には新鮮さを感じるに違いないラインナップだ。 今回のイベントの大きな見どころは、南と6人のゲストによる共演。南がソロで数曲披露したのちにゲストが現れ、再び南のソロへ…という形で、さまざまなゲストが顔を見せた。 ゲストは50周年を祝うに相応しい、南と親交の深いメンバーばかり。たとえば2016年にジョイントライブをおこなった縁からアルバム「Half&Half」を一緒に作った、杉山清貴も登場した。音楽性だけではなく、海が好きな者同士という共通点もあるという。透明感のある杉山の声と南の声はよくマッチする。2人の歌声が響くと、化学反応が起きたかのようにホールの空気が一変する。 さらに白いドレスで登場した太田裕美のステージも印象深い。南とはかつて同じレコード会社「CBSソニー」に所属していた時期もあり、古くから付き合いがあるそうだ。南の歌と伴奏で「木綿のハンカチーフ」を変わらぬ美声で歌い上げると、同曲を作詞した松本隆が花束を持ってステージに。1974年に松本が作詞した「雨だれ」でデビューした太田は、南と1年違いのほぼ同期といえる関係。そしてそんな2人の楽曲に携わった松本からのサプライズだ。 さらに松本と同じ「はっぴいえんど」の元メンバー・鈴木茂という豪華すぎるゲストも。今回のイベント用に松本隆が書き下ろした「夕方ブランコ」を南と太田が歌い、鈴木がギターサウンドで盛り上げたシーンは奇跡のような一幕だった。 ■南佳孝のデビュー50周年は松本隆との友情の日々 今回のライブで見逃せないのは、南が盟友である松本を呼び込んでおこなった2人だけのトーク。 「君があのとき僕を拾ってくれて」と松本に感謝した南は、50周年という節目に改めて「新しいのをやろう」と呼びかけた。松本は苦笑交じりに「せっかちだから君は。(僕たちは)晩年だから落ち着いて(やろう)」と返答したが、最終的には南の「新しいアルバムを作っていきたいと思います」との宣言に同意した。 松本にとって南は「お互い同じ年で趣味も似ている、飾らないで詞が書けた唯一の人」とのこと。半世紀という長い時間を支えあって駆け抜けてきた南と松本の深く強い絆を、改めて確認できる感動的なシーンだ。 目に焼き付けておきたい貴重な同ライブを、衛星劇場が放送。音の波を味わえるライブ体験は至上だが、細部の演出やミュージシャンたちの表情が楽しめるのは映像作品ならではといえる。 メモリアルな記念ライブに駆けつけられなかった人はもちろん、現地で味わった人もまた違った体験ができる同番組。放送は年の瀬も近づく12月23日(土) の夜7時30分からとなっている。 ◆文/シン上田