小惑星「Asakawa」誕生 福島・二本松出身の歴史学者・朝河貫一の名を冠した理由は<戦後80年へ>
福島県二本松市出身の世界的歴史学者で、1941年の日米開戦の回避に動いた朝河貫一(1873~1948年)の名を冠した小惑星が誕生した。2025年は日本各地が焦土と化した敗戦から80年。今も世界で戦禍が絶えない中、朝河を顕彰する関係者が「宇宙から平和を願ってほしい」と命名に取り組んだ。(福島総局・東野滋) ■晩年に詠んだ長歌から着想 <光満ちわがたまつゐに融(と)くる時、われも世を照らす星とならむか>(自分がなくなれば、世界を照らす星となるのだ) 朝河が晩年に詠んだ長歌の一節から着想し、有志が動き始めたのが7月。福島県田村市の星の村天文台の大野裕明名誉台長(76)を通じ、札幌市のアマチュア天文家が発見した小惑星の命名提案権を譲り受けた。国際天文学連合(IAU)に申請し、10月14日に認定された。 小惑星の正式名称は「29159Asakawa」。直径5・5キロ(推定)で、火星の外側を3・7年かけて太陽を1周する。17等星のため、肉眼では見えない。大野名誉台長は「今の時期は、東の空で輝く木星のそばにある。存在に思いをはせてほしい」と話す。 米国に留学した朝河は、1909年出版の「日本の禍機」で祖国の軍国主義の増長と国際社会から孤立する外交姿勢を批判。米エール大教授となり、41年には昭和天皇宛ての米大統領親書の草案を作成するなど開戦阻止に奔走した。 早大文学学術院教授で、朝河貫一博士顕彰協会の甚野尚志(たかし)会長(66)=福島市出身=は「朝河博士は日本の針路を心配し続け、最後は星になって見守りたいとの思いを長歌に込めた。Asakawaを導きの星とし、国際協調の中で日本だけでなく世界全体の平和を実現しなければいけない」と語る。
河北新報