【漫画家に聞く】ロードスターに憧れ続けた老人と“自動運転ロボット”のツーリング……自動車好きに刺さるSNS漫画
生成AIを始めとした技術革新の波が押し寄せている。車好きにとっては自動運転の普及で人力による運転が駆逐されるのではないか、という懸念もあるようだ。 全ての車好きに刺さる漫画『2060年、はじめてのロードスター』 免許返納を済ませた80歳の主人公と女性ロボットのツーリングを描いたSNS漫画『2060年、はじめてのロードスター』は、そんな未来をパステルカラーで描いている。 作者は自身も車をこよなく愛する、なかもとVic(@Nakamoto_vic)さん。彼が本作で伝えたかったこととは。(小池直也) ――本作の反響について、どう受けとめていらっしゃいますか。 なかもとVic(以下、なかもと):最初に投稿したのは2021年で、その時も4000いいねをいただきました。今回の再掲は『コミックマーケット』に参加する宣伝の意味も込めたものだったので反響に驚いていますね。3年前には届かなかった方にまで波及したのは嬉しいです。 私のような自動車好きにとっては車の未来が怪しくなっているように思えます。これからもスポーツカーは製造販売されるのか、自動運転技術によって人力運転ができなくなるのか、といった漠然とした不安も注目してもらえた要因だったのかもしれません。 ――ストーリーの着想は? なかもと:自動運転は現在、多くの企業が研究開発していますが、近い将来で一般的にイメージされる完全な運転自動化の実現は正直難しいと思っています。でもネット上には短絡的な「もう免許を取る意味はない」という意見もあるんですね。 それに対して制作したのが、この荒唐無稽な物語。自分としては「これくらいの技術でないと自分は自動運転は認めないぞ。やれるならやってみろ」という気持ちでした。 ――アンチテーゼとしつつも、ロボット・あおばは優しい存在として描かれています。 なかもと:ただ自分の言いたいことやカウンターを狙って、読者が限定されるのは寂しいじゃないですか。だから「こんな未来が実現できるなら自動運転も悪くないな」といったような、色々な見方ができる物語に仕上げています。 ――パステル調の絵柄も柔らかさを演出していますね。 なかもと:Twitterで目に留まりやすいこともあり、色を付けたかったんです。当時可能だった精一杯が本作の水彩風のスタイルでした。線画にこだわるよりも、色の表現を追求する方が自分の性に合っていると気付いたんですよ。これからも自分の漫画は今後もカラーで描いていくつもりです。 ――マツダ・ロードスター中心に描いた理由は? なかもと:運転場面でもキャラの顔を見せやすいオープンカーを描きたくて、描く参考用に近所の雑貨屋さんで買ったミニカーがロードスターだったんですよ。 でも当時はあまり詳しくなかったんです。大好きになったのは本作が人気を得てからでしたね。それで昨年、実車を買ってしまいました(笑)。 ――有名飲食店の看板を誤認識する場面もユーモアを感じました。 なかもと:あれは2021年に運転支援システムがご認識したという実例があって、そのオマージュです。 ――「自分で運転する」ことの魅力とは何でしょう。 なかもと:「いつでも自分が所有する車で好きな場所へ行けること」が価値だと思うんです。それは他の交通機関やライドシェアリングにはないことですから。どんな時代が来ようとも、この価値は失われない社会であってほしいなと。 こういったことをSNSで書きたくなる瞬間もありますが、僕は文章で書くよりも漫画で表現していければと思っています。 ――そして『コミックマーケット104』にも参加されるということで。 なかもと:8月12日、東プ29aで本作や別作品を解説とともに収録した同人誌を販売しているので、ぜひ手に取ってください。もし反響が大きければ、BOOTHなどで継続的に買えるようにしたいです。
小池直也