【新大河『光る君へ』第一話】「なぜ女子なのに漢文がわかるのか」の問いに紫式部(まひろ)の答えは。現実とフィクションがせめぎ合う展開はいかに
2024年のNHK大河『光る君へ』の第一話が放映された。早くも話題を巻き起こしているその内容と見どころ、史実との比較、今後の展開予想を、『みんなで読む源氏物語』(ハヤカ ワ新書、2023年)を上梓した渡辺祐真(スケザネ)氏が徹底解説する。 【※本記事では『光る君へ』の内容やネタバレを含みます。ご注意ください】 【画像】目の下のクマが恐ろしい、ユースケ・サンタマリア演じる安倍晴明
舞台は、大河としては珍しい「平安時代」
2024年のNHK大河『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)の放送が、1月7日に始まった。 中心となる人物は、吉高由里子演じる、『源氏物語』の作者で知られる紫式部〈まひろ〉。そして柄本佑演じる、貴族社会の頂点に立つ藤原道長〈三郎〉だ。 時代は平安時代中期(西暦1000年前後)。多くの大河ドラマがテーマにしてきた大きな動乱や戦は少ない分、宮中での権謀術数や腹の探り合い、出世のための手練手管が政治をも動かしていた時代である。 放送前にも、本作のテーマに「戦はなし」と語られていた通り、第一話から貴族たちの陰湿でしたたかなやりとりが基調をなしていたのは、平安時代の特徴がよく表れていたように思う。
第一話のあらすじは?
第一話では、まひろの幼少時代が描かれた。 まひろの父・藤原為時(岸谷五郎)は下級貴族だが、五年前から現在に至るまで官職を得られず、貧しい生活を送っている。 そんな日々の中でも、まひろは父とともに書物に親しみ、小鳥の世話を楽しみに明るく生きている。 対照的に描かれるのが、時の権力者たる藤原兼家(段田安則)の一族。兼家には、道隆(井浦新)、道兼(玉置玲央)、詮子(吉田羊)、そして三郎(のちの藤原道長、木村皐誠)という4人の子どもがいる。 詮子は天皇に嫁ぎ、道隆は野心に燃え、次男の道兼は兄に対する対抗心から強い焦りを覚えている。その中で三郎だけは持ち前のマイペースさを崩さず、すくすくと育っていく。 そんなある日、まひろは不注意から飼っていた小鳥を逃がしてしまう。慌てて小鳥を追いかけ河原までやってくると、そこにいたのは三郎だった。二人の運命的な出会いである。 三郎は涙ぐむまひろを慰めてやり、おどけて自分の足で地面に字を書く。まひろは名前ではなく漢文を書いてほしいとせがむと、「女子なのになぜ漢文が書けるのか」と三郎は訝しむ。そこでまひろはとっさに「自分は帝の血を引く姫君だから、漢文を教わったのだ」と嘘をつく。 それを縁に、二人はしばしば会うようになるのだが…。 以上が第一話の中盤ごろまでのあらすじである。