19歳のときに通り魔事件で同級生を亡くした人気漫画家の未成年時代「漫画を描くのって苦しいので、行き詰まるともうやめちゃおうかなって今でもふと思うけど…」
少しくらい他人に迷惑かけても、好きなことをやるべき
――そうなんですね! 先生自身、描いていて感触はどうでしたか? 読切を描いたときは全然ノッてなかったんですが、連載用のネームは結構おもしろく描けたなと思ってましたね。でも、連載化しても正直人気はなかった(笑)。 ――とはいえ6巻まで続き、映画化も果たしていますよね。 最初は1巻で終わる予定だったんですが、ファンレターが8通も届いたんです。少年誌と違って青年誌の漫画にファンレターが来るのって珍しいので、編集部もおもしろがってくれたみたいで。しかも、そのうちの1つは作中歌に曲をつけた自作CDでした。 「日々ロック最高!」ってでっかい文字と日々沼が何かを突き破っているイラストが添えられてて、小学生からの手紙か?って(笑)。でもすごくうれしかったですね。その後も基本的に人気はなかったけど、そんな一部からの反響と編集部内での好評があって続いていきました。 ――トントン拍子というわけではなかったのですね。20歳ごろのご自身に、今何か伝えたいことはありますか? もう少し絵の勉強をしておきなよって言いたいです。雑誌に載るまで、なぜか自分は絵がめちゃくちゃ上手いと思っていたんですが、載ってみてあれ?って気づいたんですよね(笑)。俺の絵、なんか変だぞ!と。しかも、『日々ロック』の連載がはじまったとき、ネットの掲示板に「ヤングジャンプでモーニングが実験的に載せそうなクソ漫画はじまる」って書かれていて(笑)。 ショックというより、めちゃくちゃいいパンチラインだなと思ったのを覚えています。今も空で言えるくらいですしね(笑)。それにしても、モーニングにも失礼だなこれ。 ――人生の岐路に立つ20代前後の若者たちに、何かアドバイスをもらえますでしょうか。 そんな大層な人間ではないんですが…。最近、人に迷惑をかけるなってよく聞きますけど、僕は多少はかけてもいいと思っています。僕自身、かけまくってきた人ですし。少しくらい迷惑かけて、好きなこと、やりたいことをやるべきです。そもそも、100%誰にも迷惑かけないなんて無理な話なんで。ちょっとくらい、いいんですよ。 取材・文/関口大起 写真/井上たろう