ヒグマやキタキツネ……自然との共存問う 北海道博物館
【北海道・札幌】4月18日にリニューアルオープンした北海道博物館(札幌市厚別区)。この北海道唯一の総合博物館をより深く知るために3回に分けてお送りしてきたインタビュー企画も最終回です。今回は「近現代の北海道と自然との共存について」と題して、現在の北海道が抱えている問題を紹介します。 【写真】「弥生時代がなかった」北海道の特異な歴史 現代の北海道については、北海道博物館の2階にある「北海道らしさの秘密」「わたしたちの時代へ」「生き物たちの北海道」という3つのテーマで展示が行われています。そのうち、「北海道らしさの秘密」「わたしたちの時代へ」では、ちょっと懐かしいものや、その名の通り北海道らしいものなどの興味深い展示が並んでいます。
「動物界からの視点」を大切に
まず驚くのが「北海道鳥瞰図」という、1936(昭和11)年に完成した北海道の地図です。当時の測量は、飛行機がなかったため、鳥瞰図絵師の吉田初三郎が歩き回りながら行い、人口の多い場所や鉄道の駅、高い山々などがデフォルメされて書かれています。今回の資料展示の責任者である堀繁久さんも「支笏湖が巨大に描かれているなど、主観が入った地図なのですが、何となく北海道だとわかってしまうところがこの人の才能だと思います」と語ります。 「あと面白いのはニシンの鍋でしょうか。“ニシン御殿”と言われる屋敷が建つくらい、北海道の漁業はニシン漁が支えていたのですが、実はニシンは食べるものではなく、絞って油を使っていました。搾りかすは本州に送られて、綿花栽培の肥料になりました」(堀さん)という、北海道経済の裏側も知ることができます。 そして、3メートルくらいの高さで切られている木々の展示もあります。雪が深い場所で伐採をするため、3メートルくらい積雪した場所が地面になります。これが春になると高い場所で切られた木が出てくるというもので、北海道ならではでしょう。
そして、現代社会が抱える問題がたくさん提起されている「生き物たちの北海道」。北海道博物館が「総合博物館」と呼ばれる所以は、いわゆる歴史学のみならず、自然学の展示が取り入れられているからです。堀さんはもともと昆虫学が専攻なので、森さんの自宅に入り込んできたテントウムシを収集し、1種類のテントウムシにどれだけの模様の種類があるのかが一目でわかる標本の展示もあります。 「この展示は、動物界からの視点を大切にしました。特徴的なのは、ごみ袋をくわえるキタキツネに、ビルの上にたたずむカモメ。そして、札幌で射殺されたヒグマの子どもの剥製です。人間社会と自然の共存は、さまざまな問題を生み出しました。キタキツネやヒグマはエサを求めて都会にやって来ます。カモメはおそらく、ビルをテトラポットと勘違いして棲みついてしまっています。ススキノのパーキングビルは、上は安全で下に行けばエサがあるので、絶好の子育て場所なんです。しかし、このような共存は限りなく難しいとは思います。というのも、射殺されたヒグマの解剖に立ち会ったのですが、お腹の中には山葡萄とコクワしか入っていなかった。ということは、何も悪さをしていないのに『ヒグマ=凶暴』というイメージだけで殺されてしまったんです。これが田舎であれば、人間に見つからなかったかもしれないのですが、札幌は24時間動いている街なので、今後もこのようなことは起こらないとは言えないので」