「野球に集中しろという声も当然」それでも「異例の起業」に挑む理由…DeNA・関根大気が語った、プロ野球選手の「セカンドキャリア問題」
プロ野球選手が直面する「セカンドキャリア問題」
――現役のプロ野球選手として、セカンドキャリアについてどう考えているのかもお話しいただけたらと思います。 関根多くの選手が、漠然とした不安を抱えているのかなという気がします。言い換えれば、具体的な課題にまではなっていない。課題に落とし込むことができれば、どうやって解決しようかという考えが自然と出てくると思いますが、漠然とした不安のところで止まっているし、そのせいで一歩目も遅れがちになっているのかな、と。 ――プロ野球選手の場合、一般の会社員などと比べて大きなお金を稼げるチャンスがある反面、いつ終わりが来るか分からないところもある。それに、現役のうちから引退したあとのことを考えるのはどうなんだ、という風潮もあるから難しいですね。 関根選手によって価値観も違います。野球のことだけを考えて邁進することに豊かさを感じる人もいる。どちらかといえば、以前の僕もそうでした。例えば食事にしても、肉を一切食べないだとか、誰もやらないようなチャレンジをしたこともあります。でも、なかなかうまくいかなかった。そうやって失敗を繰り返しながら、視野を広くすることの大切さに気づいて、トータルの人生を考えて動かないといけないなと思うようになりました。 もちろん、現役の選手でいられる間は全力を尽くしますけど、その先は何も見えないところを歩かなきゃいけないとなればやっぱり怖いですから。ロールモデルというのは言い過ぎですが、今はちょっと目立つような挑戦をしているので、この二足の草鞋をなんとか成功させて「関根って、いい人生を送っているよね」という見方をしてもらえるようになればうれしいですね。
一人ひとりの子どもに合わせた支援を
――施設の話に戻ります。『グローブ』で子どもたちに提供される支援の中身には、関根選手らしさを反映した、何らかの特徴があるのでしょうか? 関根僕が運営責任者であることは、サービスの内容にはほとんど影響しないと考えていただいたほうがいいかなと思います。発達支援には「健康・生活」「運動・感覚」「認知・行動」「言語・コミュニケーション」「人間関係・社会性」の5領域と呼ばれるものがあって、どれか一つに特化することは求められていないんです。 みんなに一律に運動をさせようとか、そういうことではなくて、あくまで子ども一人ひとりに合わせたアプローチをしていくことが大事。開所の時点では、児童発達支援管理責任者を含め4人のスタッフがいて、今後さらに増える予定です。来てくださる子どもたちの特徴を丁寧に見させていただきながら、支援の方針を決めていければと思っています。 ――関根選手にとっての2024年のレギュラーシーズンは、昨季と比べると厳しい戦いになったかと思います。事業のほうも、そして野球でも、今後さらなる奮起が求められますね。 関根はい! 終盤はファームで過ごすことになってしまいましたが、打撃に関してはいろいろと変化を加えて、それが形になってきているところです。僕よりも若い選手が1軍で試合に出るようになってきたので、その選手たちに僕は勝たないといけない。そのために何が必要か、自分にしかない魅力をどうやってつくっていくかを考えて、これからも挑戦を続けていこうと思います。こう変えれば未来が明るくなるな、というビジョンを描けていますし、有意義な時間を過ごせていますよ。 ――いろいろな話を聞かせていただいてありがとうございました。これからも期待しています!
日比野 恭三(ノンフィクションライター)