「強打の東邦」本領発揮 強豪対決制し8強 /愛知
<2019 第91回センバツ高校野球> 「強打の東邦」の実力を見せつけた。第91回選抜高校野球大会第8日の30日、広陵(広島)と対戦した東邦は16安打12得点の圧勝で14年ぶりのベスト8進出を決めた。選手たちの活躍に三塁側アルプス席を埋めた約1100人の応援団からは、ひときわ大きな拍手が送られた。東邦は4強入りをかけて大会第9日の31日、準々決勝第3試合(午後1時半開始予定)で筑陽学園(福岡)と対戦する。【高井瞳、秋丸生帆】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 アルプス席に響く「戦闘開始」のかけ声に応えるように、初回から東邦打線が本領を発揮する。四球などで2死一、二塁の好機を作ると、吉納翼選手(2年)が低めの変化球を捉えて先制打。塁上で満面の笑みでガッツポーズを見せた。続く長屋陸渡選手(3年)も左前適時打で追加点を挙げ、アルプス席では父和人さん(49)が「野球一筋の息子。夢の舞台で活躍してくれてうれしい」とメガホンをたたいて喜んだ。 三回、先頭打者の石川昂弥主将(3年)が左中間に本塁打を放つと、悲鳴のような歓声がアルプス席を包み、野球部員が抱き合って喜んだ。マネジャーの大矢亜未さん(同)は「石川なら打ってくれると思ってた」と興奮した様子で話した。 この一打で打線はさらに勢いに乗る。熊田任洋選手(同)の中前打や、長屋、河合佑真(同)両選手の連打などで2点を追加。さらに2死二塁から山田航大選手(2年)が適時二塁打を放つと、父和寛さん(47)は「秋にけがで苦しんだ分、活躍してくれてうれしい」と目を細めた。 9点差で迎えた八回には「まだまだ攻めるぞ」という森田泰弘監督の言葉に鼓舞された打線がさらに3点を追加。この春定年の佐々木泰裕校長(60)は「センバツが終われば私の校長人生も終わり。一日でも長くこのスタンドで応援したい」と話した。 投げては石川主将が6回を0点に抑える好投。その後も3投手の継投で強豪の広陵打線を2点に抑え、試合を決めた。応援席には東邦が1989年の平成最初のセンバツで優勝した時のエースで、名古屋市でわらび餅店を営む山田喜久夫さん(47)の姿も。「明日もお店を休まなきゃな」と笑顔を見せ「今回の勝利でぐっと優勝に近づいた。あと3回勝って平成最後を東邦の優勝で締めくくってほしい」と期待を込めた。 ◇太鼓で選手を鼓舞 ○…東邦の応援スタンドでは、野球部の大沼昂暉さん(3年)=写真=が太鼓をたたいて選手を鼓舞した。大役に抜てきされたのは2月下旬。友情応援に駆け付けてくれた大阪桐蔭高吹奏楽部との共演に「1カ月しか練習していないので合わせるのが大変」と苦笑するが、「学校からグラウンドまで走るバスの中で毎日のように太鼓のリズムを刻んで準備した」と言うだけあって堂々としたバチさばきを披露した。 ◇朝風呂効果で勝利 ○…早朝で気温が低く、体が動かしづらくなる第1試合の対策として、東邦ナインは朝風呂に入って体を温めた。森田泰弘監督が高校球児として甲子園に出場した際に実践しており、選手に指示した。この日、5打数3安打の活躍を見せた長屋陸渡選手(3年)は「体が軽く、いつもより動きやすかった。お風呂効果もあって勝つことができました」と笑顔を見せた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球譜 ◇監督に優勝を贈りたい 松井涼太選手(3年) 先頭打者として立った八回の打席。相手投手の緩いカーブを捉えると、強い打球が遊撃手のグラブをはじく強襲ヒットとなった。 1番打者としてチームを勢い付けるような打球を心がける。「試合の流れを決める大切な役割。ヒットにならなくても、強い打球を打って後ろの打者を元気付けられるようにしたい」 昨秋の県大会前に右足を負傷した。県大会ではベンチで盛り上げ役に徹したが、森田泰弘監督から「焦らんでいいから、ゆっくり治せよ」と声をかけられた。「監督のおかげで治療に専念できた」と振り返る。 そんな森田監督が今冬、腎臓移植手術のため2カ月グラウンドを離れた。「監督が帰ってきた時に成長した姿を見せたい」と、1番打者として期待に応えられるよう素振りや体幹トレーニングに励み、スイングスピードに磨きをかけてきた。 そして臨んだ甲子園。1回戦では、1死二塁の好機で勝ち越しの一打を放ってチームの勝利に貢献。この日も初回から鋭いスイングで相手投手にプレッシャーを与えた。「強い打球で東邦打線を勢いづけ、監督に優勝をプレゼントしたい」と前を見続ける。【高井瞳】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽2回戦 東邦 204000330=12 000000020=2 広陵