アーティスティックスイミング　乾友紀子さん

　滋賀県で開催される国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会（国スポ・障スポ）が開幕1年前となった。経済成長に国中が沸いた昭和期に開かれたびわこ国体から44年。平成を飛び越え、令和という新たな時代に、名前も変わった新しい大会を迎える。未来の滋賀を担う選手たちが、支える人が、そして街が動き出している。 　アーティスティックスイミング（AS）のソロで世界一に輝き、世界の「ソリスト」となって一線を退いた乾友紀子さん（33）=井村ASクラブ。現在は所属クラブのコーチとして新たな一歩を踏み始めている。近江八幡で生まれ育ち、小学生時代に競技を始めた乾さんは、地元で迎える大会に特別な思いを抱いている。 　　　　　◇ 　草津に完成したプールは、それはそれは立派。屋内で年間を通して使えて、飛び込みやASができる深いプールもある。冬場にスケートリンクに変わる施設が多いので、先生方が練習場所を探すのが大変でした。私は小学生時代、土曜は大津の皇子が丘公園プールへ、日曜は彦根にあったプールに通っていました。屋外ですから夏はいつも真っ黒。懐かしい思い出ですが、あの頃にこんなプールを造ってほしかったな。 　来年の国スポに向けて滋賀のASチームの指導にも携わらせていただいてます。8月からはこのプールでの練習も始まり、いよいよ本格的に動きます。地元の国スポに関われることにやりがいを感じています。 　引退後は大阪の病院に勤務しています。けがを経てリハビリを終えた方の継続的な体作りをサポートしています。高齢者が多いですがアスリートも来ます。いろんな方に接し、気づかされることが多い。皆さん、年齢や体の状態に応じて小さなチャレンジを重ねているんです。自分で自分の体を動かせているという感覚って、気持ちが前向きになると思う。現場で実感します。 　体が健康になれば心が元気になる。その一つとして、泳ぐことが生活の一部になればうれしい。水泳の中でも私は水の中で自由自在に動けるシンクロに魅了されました。それぞれの目指すレベルに応じて水に親しんでほしいです。滋賀にはこんな立派なプールができましたし、ぜひ生活の中にスポーツを取り入れてほしい。 　いぬい・ゆきこ　1990年、近江八幡市出身。小学1年でシンクロナイズドスイミング（アーティスティックスイミング=AS）を始め、6年時に井村シンクロクラブ（現井村ASクラブ）へ。2012年ロンドン大会から五輪に3大会連続出場を果たし、16年リオデジャネイロ大会はチームとデュエットで銅メダル。昨年福岡で開かれた世界選手権のソロ2種目で2大会連続となる金メダルを獲得した。近江兄弟社高を経て立命館大出身。