会の設立であいさつする菅野代表＝ウイング・ウイング高岡

　高岡鋳物発祥の地で重要伝統的建造物群保存地区（重伝建）となっている高岡市金屋町の住民や市内経営者らが、旧冨田宗治郎鋳造所と周辺を整備し、保存、活用する取り組みに乗りだした。27日、推進する会が設立された。鋳物産業の近代化を物語るニシン釜や溶解炉「キュポラ」などの産業遺産に光を当て、観光客の憩いや交流の場も創出して一層のにぎわいにつなげる。 【写真】工場跡地に残るニシン釜の鋳型=3月 　金屋本町にある旧冨田鋳造所は昭和初期からニシン釜や風呂釜などを製造した大型工場で、1981（昭和56）年に廃業した。工場は取り壊されたが、大型製品の大量生産を可能にし、高岡鋳物の隆盛を支えたキュポラやニシン釜の鋳型、資材置き場などが残されており、鋳物師（いもじ）町のシンボルとして生かしていく。 　工場跡は重伝建の範囲外にある。推進する会は観光客の散策エリアを広げ、約500メートル離れた重伝建の山町筋との間にある地域資源も活用し、まちなかの回遊性の向上も図りたい考えだ。 　整備エリアは約4500平方メートルで、構想ではニシン釜の展示資料館、緑地公園、防災広場、飲食や土産物、観光情報発信といった機能を持たせた施設などを設けることにしている。 　今後、市や経済団体などとも連携し、整備計画の策定を目指す。市民を対象にしたシンポジウムや見学会などを開催して会員の拡大も図る。 　推進する会によると、北海道では江戸時代後期からニシン漁が始まり、大正期に最盛期を迎えた。魚油や肥料をつくるため金屋町製の釜が北前船で運ばれ、豊漁続きのニシンの加工を支えた。ニシンの肥料は高岡にも届き、綿花栽培に生かされて、山町筋には綿に関する多くの商家が生まれたという。 　27日にウイング・ウイング高岡で設立発起人会が開かれ、代表に菅野克志氏（高岡ガス社長、末広開発社長）が就いた。山町筋の国重要文化財「菅野家住宅」の当主でもある菅野代表は「素晴らしい歴史素材をしっかりと発信し、山町筋や瑞龍寺、勝興寺とも結び付けられるようにしたい」と話した。