高齢化や人手不足...救急で診てもらえない時代が来る? 自分の体を守るために知っておきたい「骨と筋肉のケア」習慣とは
おそらく誰もが理想とするのは、好きなことを楽しみながら健康で長生きすること。60代はバリバリ現役でよく働きよく遊び、70代は楽しく海外旅行。80代では背中がスッと伸び、おしゃれを楽しむ。脳の認知機能も問題なく、日々の食事もバランスよく食べる。そんな誰もが理想とするような未来は、ただ待っていても訪れないのが現実だ。 【写真】ステージ4の結腸がんと診断されたフィットネスインストラクターが、女性たちに伝えたい17のこと 内臓機能の安定感ももちろん大事だけど、幸せは“動ける体”があってこそ。骨と筋肉のスペシャリストである、整形外科医の陣彦善先生がレクチャー。
「健康寿命」と「平均寿命」の約12年のギャップ
「2022年のデータでは、日本女性の平均寿命は87.09歳で世界一ですが、健康寿命は75.38歳(2019年データ)。健康被害があって日常生活に支障をきたすようになってから、約12年もあります。これはあまりにも長い」(陳先生)。 深刻なのは、運動機能や思考力が低下し一人では生活できない“要介護”だが、いきなりその状態になるわけではない。「その前のステップが、基本的な動作は自分でできるけれど負担の大きい家事などは支援が必要な“要支援”。要支援の原因のトップが関節疾患です。膝や腰の痛みから始まり、痛くて運動不足になる→筋力が低下して歩けない→転んで骨折、とアクティビティが下がっていく。でも、脳梗塞や心筋梗塞など予測不能な疾患に比べ、骨と筋肉はアレンジ次第でコントロールが可能、意識すれば勝てる試合なのです」。 この先の日本の医療体制も安心とは程遠い。「医療費が上がらず保険医のなり手が減っているのが現状で、救急で診てもらえない時代が来るかも。だからこそヘルスリテラシーを高めて自分の体は自分で守る意識をもってほしい。動けなくなってから考えるのではなく、今から未来のリスクマネージメントを」
老化の分かれ道になる40代は、 体改革の適齢期
つい後回しになる“骨活”。でも危機はすぐそこまで近づいている。「女性の骨密度は18~20歳をピークに緩やかに下降し、閉経以降は激減します。40代以上の乳がん検診受診率は約47%ですが、骨密度検査を受ける人はわずか5%程度。骨粗しょう症は老人の病気と思っているかもしれませんが、40代でも10人に1人は予備軍の骨量減少症なのです。骨粗しょう症は早期発見、早期治療すれば、骨密度の改善が期待できる」。 骨量は個人差が大きいことが特徴だ。「低体重の人や若いときに無理なダイエットを繰り返していた人、ステロイドを長期で服用している人、骨は遺伝的要因も大きいので両親に骨折歴がある人は、40代から年1回ペースで全身型の骨密度検査を」。 一方、骨格筋量のピークは25~30歳で、運動習慣がない女性は閉経後に急降下。中でも下肢の筋力低下は著しく、意識しなければ30代から1年に1%程度減っていき、80歳では半分に。 「筋肉量が減ると冷えが深刻になり、速筋から先に落ちていくので歩くスピードも遅くなります。また、姿勢が悪い、歩幅が狭い、握力低下も老化のサイン」