『光る君へ』諸説ある紫式部の没年、最終回に向けてドラマではどんな「旅」が待ち受けているのか
■ 出家した道長に藤原実資がなお政治力を持たせようとしたワケ 寛仁3(1019)年3月21日、道長が出家する。『小右記』では、実資が道長のもとに駆け付けたところ、すでに出家した後だったという。 実資は道長の姿を見て「容顔、老僧のごとし」(容顔は老僧のようであった)と感想を日記に記しながら、道長に対してこんな提案をしたという。 「一月に五、六度、竜顔を見奉るべし」 (1カ月に5~6度は、後一条天皇のお顔を見られますように) 実資が道長にまだ政治力を持たせようとしたのは、後継者である摂政の頼通がまだ頼りなかったからだろう。今回の放送では、頼通がオタオタする場面も随所に描かれていた。 道長が出家する少し前の同年1月5日には、道長のもとに頼通の使者がやってきた。なんでも、叙位の議を行おうとしたのに、藤原顕光(あきみつ)と藤原公季(きんすえ)の両大臣が理由をつけて、内裏に来なかったのだという。 「いかがいたしましょう」という頼通からのおうかがいに、道長は「叙位を停止すべきではない。大納言を召して、叙位の議を行うべきである」と主張している。ドラマでもこの通りの展開が描かれたが、道長が元気なうちに頼通がしっかりとしたリーダーになることはできるのだろうか。
■ 赤染衛門の新たな挑戦、『栄花物語』誕生へ 一方で、頼通と同じく親からバトンタッチされたのが、まひろ〈紫式部〉の娘・賢子(かたこ)である。 賢子が「宮仕えをしたい」と言い出したので、式部は彰子のもとに出仕させることにした。 実際の式部は『紫式部日記』の中で、女房のあるべき姿について筆を振るっており、娘の賢子に向けて書いたのではないかとも言われている。式部が賢子をどんなふうにバックアップするのかにも注目したい。 そして、もう一人、大仕事に直面することになったのが、歌人の赤染衛門(あかぞめえもん)である。 ドラマでは、道長の妻・倫子から「殿の華やかな生涯を書いてほしい」と依頼され、「まことに私でよろしいのでございましょうか?」と驚きながらも引き受けている。これが歴史物語『栄花物語』の誕生につながるというストーリー展開となった。 だが、ドラマでは実は倫子はまず式部に同じ依頼をして断られている。そんな経緯は少しも感じさせることなく「衛門がいいのよ」と言って赤染衛門を感激させた。 その手腕にSNSでは「理想の編集者」という声も上がった。赤染衛門がどう物語をつづるのかも楽しみである。