「光る君へ」大石静氏“0”から紡いだ平安大河「大きな達成感」3年超「夜から朝に執筆」早くも次回作始動
◇「光る君へ」脚本・大石静氏インタビュー(1) 女優の吉高由里子(36)が主演を務めるNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8・00)の放送も残り2回。脚本の大石静氏(73)が「源氏物語」の作者・まひろ/紫式部(吉高)と時の最高権力者・藤原道長(柄本佑)の“特別な絆”を切なく、内裏の権力闘争を生々しく紡ぎ上げ、視聴者を魅了し続けている。美術チームも奮闘し、初の“平安貴族大河”を見事に活写。“非戦国大河”“文化系大河”の可能性を切り拓いた。最終回(第48回、12月15日)目前、大石氏に3年4カ月に及んだ執筆・作劇の舞台裏を聞いた。 【画像あり】悲痛な叫び…周明っ!衝撃ラストにネット絶句&涙…周明の心臓に矢「鬼脚本」「話したいこと?」まひろと再会即悲劇 <※以下、ネタバレ有> 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などの名作を生み続ける大石氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となった。 平将門を主人公にした1976年「風と雲と虹と」に次いで大河史上2番目に古い時代が舞台。平安中期の貴族社会を題材にした大河は今回が初となった。 今年9月に脱稿。長丁場の執筆を終えた心境について、大石氏は「日々の生活がつまらなくなっちゃいました」と第一声。「高度成長期に育ちましたから“しゃかりきに働くことは美徳”という価値観が染み込んでいて、私もワーカーホリックなんですよね。やっぱり一つの目標に向かって走り続けている時が素敵で、書き終わった時は“やっと睡眠が取れる”と3日間ぐらいダラダラ寝ていたんですけど“全然幸せじゃない!”と思って(笑)。映画もいくつか見に行ったんですけど、作品に関わっている時は“自分ならこうする”とか“ここは参考にしよう”とか刺激を受けるんですけど、今回はボーッと見て帰ってくるだけ。いざ休んでも、3日も経つとつまらなくなっちゃって、やっぱり私は仕事をしていなきゃダメなんだなと、あらためて実感しましたね」と根っからの脚本家ぶりを明かした。 「なので、年明けからのつもりだったんですけど、次の作品に取り掛かっています。まだ台詞は書いていないですけど、主人公の仕事の取材をしたりし始めました」。インターバルもそこそこに、次回作へ始動。衰えぬバイタリティーに驚かされた。 以前から夜型人間だったが「昼間は電話がかかってきたり、宅配便が来たりして集中が途切れてしまうんです。宅急便を受け取って、すぐに平安時代の世界に戻れないでしょ(笑)。今回はどんどん昼夜逆転が激しくなって、夜10時ぐらいから朝6時ぐらいまでが本番というサイクル。夜の方が捗りますね」。まひろが夜も筆を執るシーンに大石氏の姿が重なった。 前回担当した大河は千代(見性院)と夫・山内一豊を主人公とした「功名が辻」で、司馬遼太郎の同名小説が原作。「ドラマに使わせていただけたエピソードは5話分ぐらいしかなくて、オリジナルの気分でやっていました。戦国時代は基礎知識もありますし、5月の終わりか6月の頭には脱稿していました。やり残したこともなく、前回の反省を活かそうということはなかったですね、今回。戦国時代と平安時代は全然違いますから」と18年前を述懐。 「平安時代は、紫式部が生没年不詳なのも今回初めて知ったぐらい無知だったので、まず入口で苦労しました。でも、(今作の時代考証を務める)倉本(一宏)先生が“平安時代は貴族たちによる怠惰な時代というイメージが強いのは、明治政府が国策・富国強兵のために戦国時代を美化し、平安時代を怠惰な時代と位置づけた”“平安時代の人々も勤勉だったと言いたくて研究している”と本に書かれていて、とても胸に染みたんです。“よし、それを私たちのドラマで描こう”と方向性の一つが定まりました。簡単に書ける作品は一つもないですけど、今回は何も知らないところから頑張って立ち上げたので、達成感も大きいです。紫式部がとんでもない天才である意味や、1000年前の日本を知れたのは素敵なことでした。いい評判を耳にすると、視聴者の皆さんにとっても平安大河が新鮮だったからじゃないかと思います」 =インタビュー(2)に続く=