『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』監督インタビュー 「“戦争の恐怖”を描く作品にしたかった」
「“スケール感”を出すことが出発点でした」
監督が目指したのは、『プライベート・ライアン』を観た時のような“没入感”と圧倒的な恐怖なのかもしれない。 「事前にさまざまな戦争映画を観て、観客がジオンの兵士と一緒に戦っていると感じられる視点を探っていきました。中でも『トゥモロー・ワールド』(アルフォンソ・キュアロン監督/2006年)の視点は参考にしました」 天才撮影監督エマニュエル・ルベッキが参加した『トゥモロー・ワールド』では手持ちカメラが主人公と並走し、熾烈な戦場の真ん中を潜り抜ける。圧倒的な緊張感、生々しい表現は本作にも通ずるものがある。本作では巨大なモビルスーツはしっかりと重量のある物体として描かれ、ビームによって攻撃を受けると穴が開くだけでなく、金属が溶け、破壊され、その結果、搭乗員が命を落とす。これまで何度も観てきたはずの『ガンダム』作品の表現のすべてが新しく感じられるのだ。 「“スケール感”を出すことが出発点でした。この作品はリアルな表現で描かれますから、そこを失敗してしまうとすべてが“おもちゃ”のように見えてしまいます。さらにいうと、モビルスーツもビーム・サーベルも現実の世界には存在しないものですよね? ですから過去の『ガンダム』作品を観ながら、バンダイナムコフィルムワークスさんと何度も話し合いをして、新たな表現を試行錯誤していきました。さらにビーム・サーベルであれば熱で金属が溶けるはずですから、その表現のレファレンスも取り寄せて改善していきました。 とは言え、この作品が最も重視したのはリアル感ではなく“戦争の恐ろしさ”です。ですから、すべての表現がドラマを描くために最も適したものになるように調整していきました」
「これまでとは違った『ガンダム』を観ていただけると思います」
ドイツで生まれたブロスダウ監督は、日本人と同じようにガンダムに触れてきたわけではない。しかし、本作ではそれが“新視点”につながっている。 「制作する上では言語の壁はありましたし、『ガンダム』というシリーズに対する基本的な考え方や感じ方の違いはありました。でも私はずっと『ガンダム』を自分の考える表現で描きたいと思っていました。例を挙げるとするなら、モビルスーツの“重さ”であったり、可能な限りファンタジックな描写を取り除いたガンダムの姿でした。それは私が日本人ではないからそう思うのか、私固有の感覚なのかはわかりません。 興味深かったのは、キャラクターの表現でも文化の違いを感じることでした。日本の方はあまり感情を表に出しませんが、西洋からしたら“もっと感情が表に出るはず”と思ってしまいます。その点でもこれまでにない『ガンダム』の人間ドラマになっていると思いますし、メインの言語が英語の『ガンダム』もおそらく初だと思います。その点でもこれまでとは違った『ガンダム』を観ていただけると思います」 本作は精巧な3DCGで描かれ、そのクオリティは極めて高いが、ブロスダウ監督は改めて「この作品で最も大事なのは人間ドラマ」と言い切る。 「この作品はあくまでも人間ドラマ、戦争の中で起こったドラマを描くためにあり、それが偶然というわけではないですがCGで描かれている、ということです」 『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』は “新表現・新視点”で我々の愛する『ガンダム』を描く最注目作になった。本作をきっかけに『ガンダム』の世界はさらに広がり、これまで以上に幅広い層のファンを獲得することになるだろう。 Netflixシリーズ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』 Netflixにて世界独占配信中 ©創通・サンライズ