フジ原田葵アナの秀逸な受け答えに見た「坂道」グループOG「古巣に迷惑をかけない」姿勢と配慮
＜ニッカンスポーツ・コム／芸能番記者コラム＞ 男女問わずアイドルグループを取材していると、メンバーが卒業したり、新しく加入したり、活動休止したり、グループが解散したり…。などなど、さまざまな局面を目の当たりにする。現役アイドルだけではなく、多くの「元アイドル」や「元グループメンバー」を見る機会も多い。現在進行形でも、多くの「OB」や「OG」がさまざまな分野で活躍している。 少し前の話になってしまうが、1つ印象的な出来事があった。9月、元櫻坂46のフジテレビ原田葵アナウンサー（24）が木曜進行を務める同局系「ぽかぽか」に生出演した際のことだ。元おニャン子クラブの新田恵利（56）と浅香唯（54）がゲスト出演し、アイドルトークに花を咲かせた。 MCのハライチの2人からアイドル時代の給与を問いただされたが、「言わないですよ」と即答した。さらに岩井勇気（38）から「今とどっちがいいの？」と聞かれ、「内緒です」と笑顔で右手の人さし指を立てた。「今、グループ頑張っている子たちがいるので。よろしくお願いします」と続けた。 個人的に、この原田アナのやりとりは、アイドルグループのOGとして見事な模範解答だと感じた。特に現役メンバーに配慮した「今、グループ頑張っている子がいるので」のくだりに、人間性が出ていた。自分の発言によって、今もアイドルを続けている同期や後輩たちに迷惑をかけてはいけない、という思いからだろう。 「ぽかぽか」では、恋愛事情の話題にもなった。原田アナは「（恋愛）禁止と直接言われたことはないですけど、アイドルは恋愛禁止というイメージがありましたし、恋愛する時間もなかったので、特に何もなく…」と当時を回想。「よく番組で連絡先交換する、とか言うじゃないですか。でもしっかりマネジャーさんが楽屋から1歩出たらトイレまでついてきていたので。そんなことあり得なかったです」と説明した。新しい（いわゆる初出しの）エピソードが全くないわけでもなく、こちらも秀逸な回答だった。 偏った意見であることを承知で書くが、こうした卒業生たちの振る舞いは、櫻坂46を含めた、乃木坂46、日向坂46の「坂道シリーズ」グループが長年人気を維持し続けていられる遠因の1つではないだろうか。女優、歌手、モデル、バラエティータレントなど個性豊かなOGたちがいるし、結婚した元メンバーも増えてきた。だが、ほとんどの卒業生の発言からは「グループに迷惑をかけるような一線は超えない」という共通認識を感じる。 前述の「ぽかぽか」では、原田アナの一連の受け答えについて、ハライチ澤部佑（38）が「つまんないなぁ」と愚痴り、元NHKアナウンサーの神田愛花（44）も「これじゃフリーでやってけないですね。身を切れっつうんですよね」とツッコんだ。確かに、いち記者、いち視聴者としては同感な部分もある。元トップアイドルから、せっかくなら誰もが驚くような話を聞きたいし、発信したい。世間でいわゆる「暴露話」に常に一定の需要があるのも、そういうことだろう。 だが、「暴露話」はもろ刃の剣だ。傷つくのが自分だけであれば自己責任と割り切れるのかもしれないが、グループに所属していればそうはいかないだろう。卒業後も、グループが存続している限り看板やイメージを背負うことになる。内容にもよるが、特に恋愛系の話題はどうしてもファンを不安にさせるし、現役アイドルとして頑張っている元所属グループのメンバーたちに迷惑をかけてしまうかもしれない。 この線引きは非常に難しいが、切った張ったの「暴露話」がなくても、実力や需要があればバラエティーでも活躍できることは、元乃木坂46の秋元真夏（31）や高山一実（30）、松村沙友理（32）らが証明している。「坂道」グループ以外でも、例えば元NMB48渋谷凪咲（28）のトーク力は抜群で、番組などで「暴露話」を求められた際も、ファンもほっこりさせるような“かわいい”エピソードを絶妙に披露し、しかも爆笑を誘っている。 2011年からさまざまなタレントを現場で取材してきたが、アイドルグループでファンのために全力で活動するメンバーたちはもちろん、「古巣」にカッコいい背中を見せてその先の道を開拓する卒業生たちも、男女問わず魅力的だ。できるだけフラットでいようと心がけてはいるが、人として尊敬できるタレントは、やはり応援したくなる。 私ごとで大変恐縮だが、11月からデスク職となり、内勤がメインとなる。記者コラムも、いったん区切りとなる（とみられる）。テーマは執筆者に任されているにもかかわらず、最後まで大した「暴露話」もなく抑揚にも欠ける内容で、書き手としてまだまだ未熟者だと痛感する次第だ。ただ、もしアイドルや元アイドルの「暴露話」が物足りないと感じたとしても、その時は寛容な心で受け止めていただきたいと願う。彼女には、彼には、自身以外にも背負っているものが、守るべきものがあるのかもしれない。【横山慧】
