1~3月GDPはマイナス成長…実質賃金がプラスになるのはいつ?
【仕事力がアップする経済ノート】 2024年1~3月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質伸び率が前期比マイナス0.5%と2四半期ぶりのマイナス成長。年率換算ではマイナス2.0%となり、日本経済の足元への不安が明らかになった。 なぜ辞退しない? 円安物価高の“A級戦犯”黒田東彦・前日銀総裁に「叙勲」のブラックジョーク 今春闘では33年ぶりの5%を超える高水準の賃上げが実施され、生活の底上げが期待されていただけに失望は否めないが、専門家の今後の見通しは明るい。景気回復気配を喜ぶ前にマイナスの統計調査から見ていく。 3月分の「毎月勤労統計調査」(厚生労働省が9日に公表)では、基本給や残業代等を合わせた現金給与総額は、1人当たり平均30万1193円と前年同月比で0.6%増加した。だが、問題は物価の影響を差し引いた実質賃金だ。 物価の高騰が続き、3月の消費者物価指数は3.1%の上昇(4月21日発表)。この上昇分を差し引くと実質賃金は前年同月比マイナス2.5%と24カ月連続で減少している。この結果、GDPの約6割を占める個人消費が、実質マイナス0.7%と4期連続減少の大きな要因となっている。 また、総務省が発表した3月の家計調査では、2人以上の世帯の消費支出は31万8713円と、物価の影響を除いた実質で前年同月比1.2%の減少は13カ月連続だ。 こうしたマイナス要因を踏まえつつも、ニッセイ基礎研究所の久我尚子上席研究員がこう述べる。 「円安による原材料価格の上昇で物の価格が上昇し物価を押し上げてきましたが、いまは物からサービス価格の値上がりが物価を押し上げています。しかし、昨年からの賃上げで今後は徐々にサービス価格も落ち着き、同時に上昇を続けた物価も10~12月には2%前半に下がり、実質賃金上昇率がプラスに転じると予想します」 ■定額減税や子育て世代への給付も消費改善に 実質賃金がプラスに転じ物価が下がれば、可処分所得の使えるおカネが増え個人消費は改善することになる。さらに、6月から実施される定額減税や子育て世代への給付も消費改善の大きな要素になることは間違いないだろう。そのうえで、久我氏がこう指摘する。 「今春の賃上げ率は高水準でしたが、継続的な賃上げと共に、従業員の約7割を占める中小企業の賃上げ率の大企業並みの改善、そして若い世代の経済基盤の強化が鍵になる」 林芳正官房長官は、5月16日の会見でこう述べている。 「実質成長率はマイナスとなったが、今後は33年ぶりの高水準となった春闘の賃上げや、来月から実施される定額減税などの効果が見込まれ、雇用・所得環境の改善のもと、穏やかな回復が続くことが期待される」 物価の値下がり、実質賃金のプラス効果は、日本経済の大きな転機と成り得る。 (ジャーナリスト・木野活明)