「凶暴性ゆえに施設で隔離される」妻の次は一人息子までも…“動物に変異する”奇病が意味するものとは 「動物界」を採点!
〈あらすじ〉
人間がさまざまな動物に変異する奇病が蔓延している近未来。そうして生まれた“新生物”は、凶暴性ゆえに施設で隔離されることになっている。料理人のフランソワ(ロマン・デュリス)の妻であるラナも同様だった。 ある日、フランソワは、一人息子のエミール(ポール・キルシェ)と愛犬を伴い、南仏に転居する。ラナの収容施設の移動に伴って、その近くに引っ越すためだ。ところが大勢の新生物を移送中だったバスが転落事故に遭い、ラナを含む40名以上が逃走。行方不明になってしまう。フランソワは自力で愛する妻を探すために森へ向かうが、次第にエミールの身体に変異が出始めて――。
〈解説〉
脚本・監督は本作が長編第2作となるトマ・カイエ。近未来を舞台に、現代の社会問題や親子の関係を描くSFスリラー。128分。 中野翠(コラムニスト)★★★☆☆近未来という設定、もっと強調したほうが、よかったのでは? 人間の動物化、あんまり見たいものではなく。楽しめず。 芝山幹郎(翻訳家)★★★★☆社会との対置があからさまなため迷宮性は薄いが、皮膚感覚で押してくる。昼でも暗いランド地方の森が効果的な舞台。 斎藤綾子(作家)★★★★☆こんなふうに家族愛を表現するとは。父と息子の口論で始まる辛さが、次第に理想的な親離れ子離れに。心情が沁みる。 森直人(映画評論家)★★★★☆ゾンビ物の変奏とも言えるが風刺は繊細。ドラマの充実度や世界像の仮構力も高い。『寄生獣』など日本の漫画の影響アリ? 洞口依子(女優)★★★★☆寛大で特異な想像力での構築が見事。カフカ的変容、現代に当てはまるスケールの寓話。フランス人のそれらは油断ならない。 INFORMATIONアイコン動物界(仏) 11月8日(金)より新宿ピカデリーほか公開 https://animal-kingdom.jp/
「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年11月14日号