八重樫に現役続行を決意させた格闘家からの手紙
前WBC世界フライ級王者、八重樫東(32歳、大橋)が6日、横浜の大橋ジムで記者会見を行い、現役続行を正式発表した。 八重樫は、昨年9月に軽量級世界最強と言われているローマン・ゴンザレス(ニカラグア)と対戦、激闘の末、9回にKO負け。12月30日の再起戦が1階級落としてのWBC世界ライトフライ級王座決定戦となったが、同級1位のペドロ・ゲバラ(メキシコ)に左ボディを効かされ、まさかの7回KO負けを喫して、本人は今後の進退について迷っていた。 今後は、階級をスーパーフライに上げて3階級制覇を狙う。5月上旬にノンタイトルでの再起戦が予定されている。大橋秀行会長は「この階級はジムに世界王者(井上尚弥)も東洋王者(松本亮)もいる。まず、その競争に勝たねばならない。WBAの河野でも、WBCでもチャンスはあるだろうが、ボディを狙われるだろう」と語った。
激闘王が帰ってくる。 「これまで進退をハッキリしていませんでしたが、現役続行を発表させてもらいます。もう一度、世界を目指します」 有利だと予想されていた年末の世界戦でKO負け。試合後の会見で「家族もいる。体が健康なうちに辞めたいし、今はどうすべきかわからない。皆さん、どう思いますか?」と、進退に関する悩みを打ち明けていたが、すでに2月には練習を再開していた。 「自分に限界は感じていない、」という。 家族会議も開いた。妻や子供たちからの賛成も得た。いろんな人に背中を後押しされたが、現役続行への気持ちを動かしたひとつが一通の手紙の存在だった。 空手家でもあり元K-1戦士でもあった角田信朗氏(53)から直筆の手紙をもらったのである。八重樫は角田氏と直接、親交はないが、自らの著書「我、弱き者ゆえに」(東邦出版)に、角田氏が2003年にラスベガスで行った弟弟子の武蔵との引退試合について触れ、倒れても倒れても立ち上がって判定までもつれこませた、その試合に感動して涙を流したエピソードを書いていた。 その記述を最近になって知ったという角田氏が、直筆の手紙を送ってきたのだ。そこには、お礼と共に、八重樫の現役続行を望み、今後ともそのファイトを見守っていきたいという気持ちが書かれていた。八重樫も「丁寧な手紙を読んで考えることはあった。いろんな人に意見をもらった。最後は自分で決断した」という。