公取委がアマゾンジャパンに立ち入り検査 出品業者に値下げ強要か
オンライン市場「アマゾンマーケットプレイス」の出品業者に対し、競合する他の通販サイトよりも販売価格を安く設定するよう強要した疑いがあるとして、公正取引委員会は26日、米インターネット通販大手アマゾンの日本法人「アマゾンジャパン合同会社」(東京都)を独占禁止法違反の疑いで立ち入り検査した。関係者への取材で判明した。公取委は、米アマゾンについても報告命令などで事情を聴くとともに、出品業者の「アマゾン依存度」の高さも背景にあるとみて幅広く情報を募る方針。 【図解】Amazonが圧力をかけるのに使ったとされる「カートボックス」とは? マーケットプレイスは一般の小売業者が出品できるアマゾン通販サイト上のサービス。検索した商品を複数の業者が出品している場合、一つの商品だけがカートボックスと呼ばれる枠に大きく表示され、他の商品はリンクのみが張られる。 出品する側からすれば、カートボックスを獲得するとアマゾンの「おすすめ」として利用者の注意を引くうえ、1回のクリックで購入につながり利便性も上がるため、売り上げ増を期待できる仕組みだ。 関係者によると、アマゾンはカートボックスと引き換えに、マーケットプレイスでの販売価格を他の通販サイトの販売価格よりも引き下げたり、自社の発送代行サービスを利用したりするよう出品業者に強要した疑いが持たれている。アマゾン側は競合する「楽天」や「ヤフー」の通販サイトの販売価格をチェックしていたとみられ、要求に応じない出品業者に「カートボックスを外す」などと伝えることもあったという。 こうした行為は独禁法が禁じる「優越的地位の乱用」や「拘束条件付き取引」に該当する恐れがある。また、取引先に対し、競合他社と比べて最も有利に取引するよう求める契約手法は「最恵国待遇(MFN)条項」と呼ばれ、大企業などが強い立場を利用して行った場合に問題視されている。カートボックスへの表示条件についてアマゾン側は「他サイトに比較して競争力のある価格であること」と表記しており、事実上、MFNの効果をもたらしていた可能性もある。 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本国内のネット通販におけるアマゾンのシェア(市場占有率)は28・2%(2021年度)でトップ。公取委は、アマゾンが出品業者に圧力をかけることで、自助努力なしに競争力を不当に高めていたとみている模様だ。 アマゾンジャパンは26日、「調査に全面的に協力していく」とコメントした。 公取委によるアマゾンジャパンへの立ち入り検査は今回で3回目。16年にはマーケットプレイスの出品業者に他の通販サイトと同等か最安値にするよう求めていた契約条件を追及。アマゾン側が撤廃したため調査を打ち切った。18年には自社で通販する商品の納入業者に対し、値引き価格の一部を補塡(ほてん)させたとして調査。その後、行政処分の確約手続きを適用し、改善させたうえで1400社に計約20億円を返金させ、調査を終結した。【渡辺暢】