浜名湖アサリ、完全養殖で復活を 「付加価値高めたい」浜名漁協など26年度事業化目標
浜名湖のアサリを完全人工養殖で復活させようと浜松市中央区の浜名漁協、浜松ホトニクス、ガソリンスタンド運営の明石吉田屋産業が中心となって6月、浜名湖再生プロジェクトを本格始動した。アサリ、カキの地元漁師21人が参入し、「養殖浜名湖アサリ」のブランドを確立する。 プロジェクトは、施設で人工的に育てたアサリの稚貝を塩ビ管の容器に入れ、カキ棚につるす「垂下養殖」で育成する。湖内を立体的に利用できるため生産性が高く、外敵から守る効果もある。2024年度は1本あたり約3千個体入りで100本の容器(計約3トン)を垂下。25年度は10倍の千本に増やし、26年度に事業化を目指す。 浜名湖のアサリ漁獲量は09年の6008トンをピークに減少し、23年は約17分の1となる362トンだった。深刻な不漁が続く中、4年ほど前からアサリの餌となる植物プランクトンの培養研究がスタート。浜松ホトニクスの光技術を生かし、特殊な色の光を水槽に当てて高効率生産を可能にし、アサリの人工種苗の生産に寄与してきた。 稚貝の垂下養殖は23年夏から本格的な試験を開始した。外海に近い湖南部の雄踏地区や、湖北部の松見ケ浦の2カ所に設置したり、60センチと120センチと異なる深度でつるしたりするなど、最適化に向けた調査を進めている。 1・5~2センチ程度に成長したアサリは今後、容器から取り出して湖底の砂にまき、網をかぶせてクロダイなどの食害から保護する。 養殖アサリの出荷先は、地元飲食店に限定する予定。明石吉田屋産業の明石真社長は「浜名湖が復活するためには、地域の力が大事になる」と強調。浜松ホトニクス社内ベンチャーの松永茂CEOは「出荷直前まで成長を促し、浜名湖の養殖アサリとしての付加価値を高めることに努めたい」と語った。
静岡新聞社