「原点」新潟で中高6年間の稽古 鍛えた下半身の〝エンジン〟 「大関」大の里㊦
新潟・海洋高相撲部の田海（とうみ）哲也総監督（63）は、大の里が小学6年生だったころの姿をよく覚えている。同高が全国制覇を果たす金沢市での大会。少年は土俵近くで、パンフレットを片手に熱心に記録を付けていた。「ひょろっとして、とりわけ素晴らしいという印象ではなかったけど、この子は相撲が好きなんだな、稽古をしたら強くなるな、と思っていました」。石川県育ちの少年は翌年、親元を離れ、新潟県に相撲留学してきた。 【写真】地区の相撲大会で優勝した小学6年生の大の里。小学校卒業時に身長は170センチ台中盤だったという 能生（のう）中、海洋高での6年間は大の里にとって「原点」となった。指導した田海総監督は「強くなりたい気持ち。それが長所だし才能。だから自主練習でも手を抜かなかった」と振り返る。 日本海に面した田海夫妻の自宅兼寮での生活は朝6時起床。同居するチームメートたちと寮内の掃除をするところから一日は始まる。当時は午後4時からの練習が10時ごろまで続くことも。終われば2キロ超の夜道を走ったり歩いたりして帰った。大の里は「トンネルがあって怖いんですよ。寮は食事がうまい。中でもフレンチトーストがめちゃくちゃうまい」と語る。 練習では「正しく継続する」ことが徹底された。しこであれば軸足で体を上げる。上げた足を止める。つま先から下ろす。へっぴり腰にならない…。負荷がかかる分きついが、田海総監督は口うるさく言って、形が乱れればやり直しをさせた。「大の里が強いのは下半身のエンジン。エンジンが違うから前に攻められる」。大の里は日体大に進んでからも毎日、1000回のスクワットを自らに課していたという。今につながる土台は、こうして築かれた。 田海総監督から見た教え子の性格は「明るく元気でポジティブ」。大会で優勝すると、教頭先生に「校内放送ありますよね」と笑顔で言うような生徒だった。対戦相手のことを考えすぎたり、緊張したりすることもほとんどない。「野球なら土壇場で『打順が回ってこい。ホームランを打ってやる』というタイプ。横綱になる要素は持っているのかもしれないですね」。大器の未来に期待は膨らむ。（宝田将志）
