<ボクシング>リゴンドーを倒した天笠が穂積に挑戦状!
前東洋太平洋フェザー級王者の天笠尚(29歳、山上)が10日、後楽園ホールで、IBFパンパシフィックフェザー級王者のパトムシット・パトムポン(33歳、タイ)とのフェザー級10回戦で、3-0の判定勝利。途中ダウンを奪うなどして再起を飾った。 天笠は、大晦日にWBA、WBO世界Sバンタム級統一王者のギレルモ・リゴンドー(キューバ)からダウンを奪う大善戦で、一気に名声アップ。プレッシャーのかかった再起戦を勝利した天笠は「次は日本人の強い人とやりたい。細野さんや長谷川さん」と、元2階級王者で再起戦を飾ったばかりの長谷川穂積(34歳、真正)、日本フェザー級王者の細野悟(31歳、大橋)との対戦を熱望した。
またアクシデントに見舞われた。 4回、タイ人の頭突きを受けて、天笠の右目がみるみる腫れ上がっていく。 「試合の邪魔にはならなかった」。試合後、天笠は、そう言ったが、大晦日の対戦でリゴンドーの規格外のパンチを浴び、顔が変形してしまうほど腫れ上がった悪夢が蘇ってきた。5回、サウスポーで動き回るすばしっこい相手を、ショートパンチで釘づけにすると「サウスポー対策に練習してきた」という左右のボディを絶妙のタイミングで叩き込んでダウンを奪う。だが、ここで一気に勝負にケリをつけることができなかった。 「癖ものだった。食ってやろうという気持ちで向かってきて簡単に倒れてくれなかった。僕も、ブロックを固めてプレッシャーをかけて倒しにいくのか、それともボクシングをするのか、迷いがあった。もっと山場を作りたかったのだが」 左フックや左ストレートがヒットはするのだが、いずれも単発で決定的なダメージブローにはならない。一発狙いの荒さが天笠の欠点ではあるが、それが持ち味でもある。ショートブローに進歩の跡が見られたのだが、最後の最後まで“癖もの”の足を止めることはできなかった。 ジャッジは「98-92」「98-91」「99-91」と圧勝だったが、例え手打ちの軽いパンチでも、ガードをすり抜けてもらうシーンが多くあってポイント差以上に苦戦を強いられた。 「リゴンドー戦の次の試合ということで、僕程度の選手であっても、無意識のプレッシャーがあったのかもしれない」 再起戦を前に心も揺れた。 「原点に帰ってボクシングを楽しもう」 「いや、上(世界を)目指すためのボクシングをしなくてはらない) しかも、相手は得意とは言えないサウスポー。その揺れた結果が後味の悪い再起戦の結果となってしまった。リゴンドー戦の後でモチベーションを保つには、相手も中途半端だったのかもしれない。 実は、元WBO世界Sバンタム級王者のウィルフレド・バスケス・ジュニア(30歳、プエルトリコ)を再起戦の相手として希望していた。 「次は世界といってもフェザー級では簡単ではない。もちろん、世界戦の話がくれば食いつくが、それが難しいならば、世界ランカーや強い人とやりたい。日本人の名のある人。細野さん。もしくは、長谷川さん。長谷川さんは、サウスポーなのがあれですが、面白いんじゃないですか?」 天笠は、世界ランカーを相手に見事な再起戦を飾った長谷川との対戦を熱望した。その気概や良しである。ファンは、好カードを求め、そういうカードの実現が、ボクシング界を活性化させる。ただでさえ、4団体が認められ、世界チャンピオンの価値観が曖昧になっている。そういう時代だからこそ、中身のある試合が求められる。 長谷川は、まだ現役続行への答えを出していない。再び世界を狙う長谷川にすれば、世界上位にいない天笠との試合に得るものはないのかもしれないが、リゴンドーを倒した男からのラブコールをどう受け止めるだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)