試用期間中に能力不足を理由に「今月いっぱいで」と解雇を言い渡されました。おかしくないでしょうか?
企業への採用が決まると、最初の一定期間を「試用期間」とされることがあると思います。 この試用期間中に「能力不足」を理由として解雇を言い渡された場合、従わなければならないのか疑問に思われる方もいるでしょう。 本記事では、試用期間中の「解約権留保付労働契約」について、解雇が無効になった裁判事例とともにご紹介します。 ▼扶養内で働いてるけど、労働時間が「週20時間」を越えてしまった!「社会保険」に加入する必要はある?
試用期間とは?
試用期間とは、従業員の採用後、その従業員の適性などを判断するために設けられる一定の期間のことをいいます。 会社が従業員を雇うときは採用面接を行うことが多いと思いますが、面接だけで業務の適性について見極めるのは難しいでしょう。そこで、試用期間を設けて基礎的な教育訓練を行うとともに、従業員の職務遂行能力を判断します。 試用期間の長さがどのくらいかは企業によって異なりますが、3~6ヶ月のケースが多いようです。
試用期間中に解雇できるのか?
試用期間中の解雇は、合理的な理由があり、社会通念上相当と認められるものに限ら れます。これが認められないにもかかわらず解雇を言い渡した場合、労働契約法第16条により無効となる可能性があるでしょう。 試用期間中は、会社と従業員の間に「解約権留保付労働契約」が成立していると判断できます。 「解約権留保付労働契約」とは、労働契約を解約する権利を留保した状態で雇用していることを意味します。そのため、試用期間中に会社が契約の解除を言い渡したり、試用期間終了後に本採用を拒否したりすることは「解雇」に当たると考えてよいでしょう。 また、労働基準法第20条、第21条では、採用後14日を超えて労働している場合は、試用期間中であっても通常の解雇と同じように、少なくとも30日前までに解雇を予告する必要があるとしています。 さらに、もし30日前までに予告をせず解雇とした場合には、会社は30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。 そのため、急に「今月いっぱいで」と解雇された場合には、規定された賃金を受け取れる可能性があるということになります。