「札幌ドーム叩き」のほとんどが「的外れ」といえるワケ…「薄い人工芝」「傾斜が急すぎる観客席」が批判されてきたが「そもそも野球のために作られた施設ではない」
『日ハムの「値下げ要求」を突っぱねて「値上げ」した…? 加熱する“札幌ドーム叩き”の「勘違い」と「嘘」を暴く! 』より続く… 【写真で比較】こんなに違う!?「札幌ドーム」と新球場「エスコンフィールド」
無視されがちな「施設改修」
ネットを中心に加熱し続けている「札幌ドーム叩き」だが、そのなかには、根拠なき批判や嘘が散見される。札幌市議・成田ゆうき氏の解説とともに、誤解を解いていこう。 「球団側の要望に、札幌ドームは応えてこなかった。だから日ハムに逃げられた」という批判も多い。だが、札幌ドームは日ハムの要望を無視していたわけではない。 例えば2016年、球団側から芝生の質改善の要望が出された。これを受けて、費用をすべて札幌ドーム側が担う形で2018年に芝生は更新されている。 その他にもトレーニングルームの整備、メインスタンドの改良など、要望に合わせて施設改修が行われていた。札幌ドームの2023年3月期決算報告書概要によれば、日ハムをはじめとした主催者たちからの要望に応え、2023年3月期までで札幌ドーム負担で累計61億円分の施設改修を行っている。もちろん、札幌ドームがすべての要望に応えられたわけではないが、そこには札幌ドームの施設としての限界もあった。 「勘違いしている人もいますが、そもそも札幌ドームは野球のために作られた施設ではありません。2002年、日韓ワールドカップの開催地の一つとして札幌が選ばれた。当時大きな競技場がなかったことから、札幌ドームの建設が計画されたのです。 しかしサッカーだけでは運営費を賄いきれず、赤字になってしまう。そこで当初から野球やコンサートなど多目的利用が検討されていました。2002年、2003年の段階では黒字で、多目的施設としてある程度採算が取れてもいたのですが、そこに日ハムが来てくれた。
「ボールパーク」を作れない事情
札幌ドームは設立当時から現在まで、日ハムの試合以外にもコンサートやコンサドーレ札幌の試合、さらには就職関連のイベント会場や介護福祉士といった国家資格の試験会場などとしても活用されています。多目的での利用があることから、札幌ドーム側としても日ハムの要望に全て応えることは難しかったと思います。常設のプロ野球球団を呼ぶために札幌ドームが作られたのであれば、批判も理解できるのですが……」(成田氏) 日ハム側が「指定管理者」となることを要望したものの、認められなかった点も批判の対象となっている。元となる「指定管理者制度」は、2003年の地方自治法の改正に伴い開始された制度だ。体育施設や教育文化施設など公の施設の運営を、自治体が指定した民間事業者に任せるという仕組みである。 球団にとっての大きなメリットが、指定管理者に指定されれば球場内での物販飲食などの利益が球団に入ること。実際、ZOZOマリンスタジアム、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島、楽天モバイルパーク宮城では、球団が指定管理者となっている。 なぜ札幌市では日ハムが指定管理者になれなかったのか、と批判する人もいるが……。札幌市には「事情」があった。 「札幌ドームは、市街化調整区域内に建っているのです。市街化調整区域とは、住宅や商業施設などを建設することが原則認められないエリアのことを指します。そのため、札幌ドームの横にホテルや商店など営利目的の施設を建てることはできません。仮に札幌ドームを解体し、新しいドームを建てたとしても、同じことです。 仮に日ハムが指定管理者になったとしても、目指していた『ボールパーク』のような事業はできなかったと考えられます」(成田氏) ちなみに、球団側が指定管理者として運営している球場は、どれも開発が可能な「市街化区域」にある。しかも、その中でも住居や商業施設の建設も可能な「近隣商業区域」に建っており、札幌市や日ハムが置かれた状況とは大きく異なっている。